政府、地方創生へ新交付金4200億円 大手紙「ばらまき」を懸念する論評

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   政府は2015年1月9日の臨時閣議で、年末に決めた経済対策(総額3.5兆円)に基づく2014年度補正予算案(予算規模3.1兆円)を決めた。2014年4月の消費税増税で低迷した景気を下支えする狙いがあり、自治体向けの交付金新設など地方の消費や生活を支援する施策が柱だ。

   昨年末に、将来の人口展望を示す「長期ビジョン」と、それをもとにした地方の人口減少に歯止めをかける「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(2020年までの5か年計画)も決定しており、経済対策は、実質的に「総合戦略」の第1弾といえる。ただ、対策の中には経済効果に疑問符がつくものもあり、「ばらまき」との批判も出ている。

東京一極集中の流れを止める

   戦略は、東京一極集中の対策として、(1)地方の雇用創出(2)地方への移住(3)若い世代の結婚・出産・子育ての希望の実現(4)時代にあった地域づくり――の4点を基本目標に据え、特に地方に「しごと」をつくることで、地方への「ひと」の流れをつくる好循環をうむとの道筋を提示。地方での若者向けの雇用を、事業開始の初年度に2万人、以降毎年2万人ずつ引き上げて、5年後に年10万人、5年間で計30万人の雇用を生み出すという数値目標を掲げた。

   地方移住については、いまは年間47万人に上る地方から東京圏への転入者を、段階的に減らし、2020年の時点で年間6万人減らす一方、年間37万人の東京圏から地方への転出者は2020年に年間4万人増やし、転出入を同一水準にすることで、一極集中の流れを止めるとした。2015年度は自治体が地方版総合戦略の策定期間とし、2016年度から本格的な地方創生を実行する考えだ。

   経済対策については、安倍晋三首相が27日の閣議決定に先立つ与党との懇談会で「スピード感を持って実行して、消費のてこ入れと地方経済の底上げを図り、経済の好循環を全国津々浦々に拡大していく」と狙いを述べたように、公共事業は3000億円程度に抑え、東日本大震災の復興事業を担う特別会計には1兆円程度を繰り入れ、福島第1原発事故の汚染土を保管する中間貯蔵施設の建設を受け入れた福島向けの交付金2500億円も計上したが、なんといっても目玉は地方向けの新たな交付金(総額4200億円)だ。

   新交付金は、「地域消費喚起・生活支援型」(2500億円)と、「地方創生先行型」(1700億円)からなる。各自治体が地域の実情に合った施策を選べる仕組みで、政府は、前者については1万円で1万1000円分の買い物ができるプレミアム付き商品券の発行や地方での就業、創業支援など、後者については、子供の多い家庭への子育て支援や低所得者向けの冬場の灯油代補助などを想定している。

   ただ、交付金は「景気回復の実感がない」との地方の声に応える狙いがあり、「2015年4月の統一地方選をにらんで新年度予算案を待たずに、前倒しで経済対策に盛り込んだ」(大手紙経済部デスク)とみられ、経済対策としての効果を疑問視する声も根強い。

「ふるさと創生」や「地域振興券」の総括なし

   過去には竹下登内閣が1980年代末に「ふるさと創生事業」として全国の市区町村に1億円ずつ交付したが、純金のオブジェになるなど「無駄な支出に使われて終わった」との批判が強い。小渕恵三内閣は1990年代末、15歳以下の子供がいる家族と65歳以上の高齢者らに対し、1人2万円分の商品券である「地域振興券」を配布したが、当時の政府試算でも、新たな消費を生み出す効果は使用額の約32%にとどまった。今回の対策で、こうした効果についての議論はなかった。

   内閣府は今回の経済対策で国内総生産(GDP)を0.7%分押し上げると試算するが、原油安のプラス効果なども含め、エコノミストの間では「すでに10~12月期はプラス成長に転じた」との見方が多い。消費税再増税を延期して財政状況が厳しさを増す中、「住宅エコポイント」(最大45万円分)制度の復活や、運送業者などを対象にした高速道路料金の最大5割の割引(2015年3月末まで)の延長などを含め、「ここまでの対策が必要なのか」(経済官庁幹部)との声もくすぶる。

   このため、大手紙の論調も概して厳しい。毎日社説は「必要性も効果も疑問だ」と題して「メニューには場当たり的な事業が並び、アベノミクスが目指す成長戦略にどれだけ役立つのか疑問が募る」とバッサリ。日経社説も「バラマキの懸念はないか」と題して「原油安の利点はいわず、円安の負の側面だけを強調してメニューを上積みするのは理解に苦しむ」「気がかりなのは、災害対策の名目で従来型の公共事業が紛れ込みそうなことだ」などと具体的な懸念材料を列挙し、「不要不急の事業にまでバラマキをしようとしているとの懸念を払拭できない」と批判している(12月28日朝刊)。

   安倍内閣に理解がある読売社説も、「地方バラマキの思惑はないか」と題して「景気の下支えを名目にバラマキ策が紛れ込む懸念は拭えない」(12月29日朝刊)と疑問を呈し、社説に相当する「主張」欄で取り上げた産経も「再加速の足がかりとせよ」と肯定的な見出しをつけつつ、「即効性を期待してメニューを並べたことは分かるが、その多くは効果が一時的で限定的なものであることには留意が必要だ」(12月28日朝刊)と、くぎを刺している。

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