「格差の固定化」という批判も
業界はビジネスチャンスの拡大を前に「新制度に対応する商品のラインアップを拡充し、ゆりかごから墓場まで人生のイベントごとに顧客をサポートする」(大手信託銀行首脳)と鼻息が荒い。既に教育資金贈与信託に続く契約獲得競争が水面下で始まっている。
しかし、現場では制度の運用面に不安もあるようだ。先行して始まった教育資金贈与信託では「この習い事は制度の対象になるのか」などと顧客からの問い合わせが殺到。領収書を一つ一つやり取りしながら経費を払い出す作業も膨大で、信託銀行の行員からは「手間がかかる割に単品ではもうけが出ない商品」とのボヤキも聞こえる。
新たな結婚、出産、育児の制度でも、ベビーシッター代は対象となるが、ベビーカーやおむつなどの購入費用は対象外など、利用者からみると分かりにくい面もあり、スタート当初は混乱する可能性もある。
そもそも、これらの制度をめぐっては「贈与する資産がある富裕層に対象が限られ、格差の固定化を助長する」との批判も根強い。政府や業界の思惑通り、眠っている個人金融資産が動き出し、経済活性化や少子化対策につながるのか注目される。