本物のうどんのおいしさを、セルフ形式で提供する讃岐うどん店チェーンの「丸亀製麺」が、「うどん県」を標榜する香川県に出店した第1号の路面店を閉めることになった。
丸亀製麺は現在、香川県高松市内に3か店を出店している。このうち、閉店が決まったのは「栗林公園店」。進出して、わずか3年での撤退となった。
14年12月の売上高は前年比2ケタ増!
丸亀製麺は、兵庫県神戸市に本社を置き、焼き鳥ダイニングの「とりどーる」や焼きそば専門店「長田本庄軒」などを展開する外食大手のトリドールが2000年から全国転換している「讃岐うどん店」チェーン。店舗ごとに製麺機を設置し、「打ちたて」「ゆでたて」を実現。さらにオープンキッチンを採用して、お客の目の前で調理する「手づくり感」や「できたて感」「安心感」と、臨場感あふれる店舗づくりが「売り」だ。
「うどんブーム」の後押しもあって、店舗網を急拡大。2015年1月13日現在、国内に781店を出店している。
トリドールが1月7日に発表した月次売上高レポートによると、丸亀製麺の14年12月の売上高(既存店ベース)は前年同月と比べて10.8%増と、2ケタの伸びを示した。これで5か月連続で前年実績を上回った。客数は6.8%増、客単価も3.7%増と好調に推移している。
そんな丸亀製麺でも、うどんの本場・香川県はなかなか手強かったようだ。2012年1月にオープンした栗林公園店も、開店当初は「うどん店チェーンの最大手がついに本場に進出した」と注目を集めたが、最近では客入りに陰りが見えはじめていたとの指摘もあり、この1月18日で閉店する。
閉店について、トリドールは「ここ数年来、年間100か店を超える店舗を出店してきたこともあり、商圏の重複などが生じるようになりました。現在、全国的に店舗運営を見直しており、最適化を図っているところで、(栗林公園店は)当社の基準に則り、業態転換することを決めました」と説明する。
うどんの本場・香川県という「事情」もあって苦戦を強いられたのではないかと聞くと、「他店に比べて(売上高が)ひどく劣るということはありませんし、当社は全国展開の会社ですから、香川県だけを特別視するようなこともありません。ただ、香川県へのリスペクトやあこがれはあります」という。そのうえで、「他店でも業態転換で売り上げが伸びたケースがあることから、今回はそのように判断しました」と、あくまで「業態転換」であることを強調している。
どんどんトッピング載せたら、「うどんの値段じゃなくなる」
丸亀製麺が香川県高松市の「栗林公園店」を閉店することに、インターネットでは、
「ビジネス街に近い小型店とかだったら、もっと採算とれてたんだろうけど...」
「香川のうまい地元店もチェーン展開とかはできていないわけで。それはああいう立地や経営だからその値段と品質を維持できるわけだからね」
「だって、丸亀製麺でトッピングをどんどん載せていったら、うどんの値段じゃなくなるんだもの」
「チェーン店って個人店より安くて味もそこそこってのが売りなのに、香川のうどん屋においては値段でまず負けてる」
と、うどんの味よりも価格が「高い」との声が少なくない。
香川県で「うどん」といえば、1玉120~140円、2玉でも250円程度で食べることができる。一方、丸亀製麺では「釜揚げうどん」や「かけうどん」「さるうどん」の並盛が280円と、町のうどん店より100円ほど高い。
これに大根おろしやとろろ、温泉玉子などのトッピングが各60円。さらに、野菜天ぷら(かき揚げ)をトッピングすると130円プラス、といった具合だ。
香川県民にとって、「うどん」は老若男女を問わず、生活に密着した食習慣、食文化として根づいている。うどん店は県全域に分布し、統計によると香川県のうどんの年間消費量は県民一人あたり2日に1食(1玉=200グラム)を口にしている計算になるという。
なにしろ、香川県のうどん店は、お客が丼を持参して、うどん玉だけを入れてもらって食べる店も少なくないという。釜揚げ、かけ、ぶっかけ、生しょうゆ... ダシ汁も蛇口をひねれば出てくるスタイルで提供される。
とにかく圧倒的に手軽に、安く食べられるうどん店が軒を連ねているのだ。そんな食習慣、食文化の違いが、「丸亀」を名乗るものの、県外から香川県に乗り込んだチェーン店の見えない「壁」になっていたのかもしれない。