米金融大手シティグループの日本法人、シティバンク銀行の個人向け事業の売却先が三井住友銀行に決まった。富裕層向けビジネスの拡大を目指す三井住友銀にとって、買収決定は大きな「クリスマスプレゼント」となったが、慢性的な赤字だった同事業を立て直せるのか、成否が注目されている。
「質の高い顧客基盤の拡充や、豊富な外貨調達がメリット」。三井住友銀の車谷暢昭・取締役専務執行役員は、シティバンクの個人部門買収を発表した2014年12月25日、記者団に対して狙いをこう語った。
三井住友銀は信託業務で他のメガバンクから遅れをとっていた
シティバンクの個人部門の顧客数は約74万人、預金は2兆4400億円。顧客のうち約10万人は預金残高が1000万円を超えるとされる。三井住友銀は買収によって豊富な金融資産を持つ顧客基盤の拡大を狙う。また、預金のうち約1兆円がドル建てといい、三井住友銀は低利のドルを調達して海外融資に回せるメリットもある。
超低金利で貸し出しの利ざやの縮小が続く中、大手行はいずれも、手数料収入が見込める富裕層向けビジネスを強化している。しかし、三井住友銀が信託業務で他のメガバンクから遅れをとっていたのは否めない。2013年、仏金融大手のソシエテ・ジェネラルから信託銀行を買収し、SMBC信託銀行に商号を変更、超富裕層の資産運用などのサービスを提供しているが、顧客は約1500人、預かり資産は約2700億円にとどまり、規模拡大が最大の課題だった。
そこへ飛び込んできたのが、不採算の海外事業のリストラを迫られていたシティグループによるシティバンクの個人部門売却だった。三井住友銀は買収額を公表していないが、関係者によると450億円で「赤字事業の買収額としては破格」(大手行幹部)。個人部門の32店舗や従業員約1600人もすべて引き取り、SMBC信託銀に統合して一気に規模を拡大する。