「現政権でAIIB参加など言い出せる雰囲気ではない」
こういうAIIBに、日米などは懐疑的だ。第一に、中国の国益第一とする「赤い国際銀行」になるとの懸念がある。各国代表で構成する理事会を中心に運営するADBに対し、AIIBは理事会を常設せず、総裁以下の執行部に権限を与える方向と伝えられる。また、世銀やADBは、融資対象事業が環境破壊や人権侵害を招かないか、腐敗の温床にならないか、などを厳格に審査しているが、「中国が主導する限り、AIIBがそうした点に十分配慮するとは考えられない」(国際金融筋)との疑念が消えない。
ただでさえ中国への警戒心が強い安倍晋三首相の下、霞が関では「現政権でAIIB参加など言い出せる雰囲気ではない」との声がある。安倍首相はG20に先立ってミャンマーで開いた日本・ASEAN首脳会議でアジアでのインフラ整備を積極的に支援すると表明。「質の高い成長」を掲げ、民間資金などを活用した効果的な資金導入や、被援助国との長期的なパートナーシップ強化などを訴え、中国への対抗心を露わにした。米国も中国の動きを警戒しており、G20の際に韓国やオーストラリアがAIIB参加を表明しなかったのは「米国の強力な説得があったから」(経産省筋)という。