メタボとはタイプが異なる「サルコペニア肥満」への関心が高まっている。メタボより怖いとも言われていて、働き盛りの中高年世代も気にかけておきたいキーワードだ。
サルコペニア肥満は、筑波大学大学院・人間総合科学研究科の久野譜也教授が2009年に発表して知られるようになった。「サルコペニア」とは加齢による筋肉量の減少のことで、それに「肥満」が組み合わさったのが「サルコペニア肥満」。端的に言えば、加齢で筋肉量が減り、脂肪が増える状態のことだ。
高血圧リスクが男性で1.7倍高い
久野教授が設立した筑波大学発ベンチャーの「つくばウエルネスリサーチ」によると、判定条件として、(1)筋肉率(体重に占める筋肉の割合)は、男性で27.3%未満、女性で22.0%未満。かつ、(2)体格指数(BMI=体重を身長の二乗で割った数値)は、25以上が該当する。筋肉率は市販の体組成計で計測できるが、片足で立って靴下が履けない場合は筋力の低下が疑われる。
一番落ちやすいのは、足腰の筋肉。筋肉が減ると歩行機能が低下する。階段を上がるのがつらくなったり、つまずきやすくなったりして日常生活に支障が出る。それが原因で怪我などすれば、寝たきりの状態にもつながりかねない。筋肉が衰えてくると、脂肪は燃焼しにくくなり、肥満は進行し、生活習慣病(糖尿病や脂質異常症、高血圧など)のリスクは高まるから厄介だ。実際に、つくばウエルネスリサーチで中高齢者5,197人を対象に調査したところ、高血圧のリスクが男性で1.7倍、女性で2.3倍高かったという。
2012年ごろからメディアでも取り上げられ始め、NHKの情報番組「ゆうどき」では、『メタボより怖いサルコペニア肥満』と紹介された。メタボ(メタボリックシンドローム=内臓脂肪症候群)とは、内臓脂肪が多く、高血糖、高血圧、脂質異常のうち2つ以上を併せ持った状態を指す。腹囲は男性で85cm以上、女性で90cm以上の場合が目安といわれ、いわば見た目にもわかりやすい。ところがサルコペニア肥満は、見た目や体重では判断しにくい。同じ体重でも脂肪量ばかりが増えて、筋肉量は減っている可能性があるからだ。
筋肉量の減少は25歳頃から始まる
サルコペニア肥満は高齢者に多いが、中高年世代も気にかけておいた方がよさそうだ。筋肉量が減るのは老化現象で、25歳頃から進行が始まるとされ、誰にでも起こりうる。サルコペニア肥満を未然に防ぎ、生涯健康でいるためには、足腰を中心に筋力を維持するための運動を続けることが大切だ。
おすすめはスクワット。座って立ち上がる動作を繰り返すことで、太もも前の筋肉(大腿四頭筋)、お尻の筋肉(大臀筋)、ハムストリングスと呼ばれる太もも裏の筋肉群などを鍛えることができる。ただし、スクワットはフォームが悪いと、膝の関節を痛めやすい。一般的に、腰を後ろに引いて、膝がつま先より前に出ないように行うのがよい。また、椅子から立ち上がり、座る動作を繰り返す「椅子スクワット」でも筋力維持に役立つ。
ちなみに、タレントの黒柳徹子さんも、スクワットを毎日欠かさず実践しているらしい。筋肉量を維持して、生涯健康に過ごしたい。
[アンチエイジング医師団 取材TEAM/監修:山田秀和 近畿大学医学部 奈良病院皮膚科教授、近畿大学アンチエイジングセンター 副センター長]
アンチエイジング医師団
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