イスラム教をネタにすることは、怖いので自粛せざるを得ないのか――。こんな自問自答をツイートする漫画家も出て、話題になっている。
フランスの新聞社「シャルリー・エブド」が銃撃され12人が死亡した事件は、改めて表現の自由への関心を呼び起こした。イスラム過激派とみられる銃撃犯らへの批判が高まりを見せ、シャルリー・エブド紙では、さらに部数を増やして徹底抗戦する姿勢まで示している。
「いやーアレはシャレになってないから」
そんな中で、日本のメディアなどは、果たしてイスラム教をネタにできるのか、といった疑問がネット上で持ち上がっている。事件は、シャルリー・エブド紙がイスラム教の聖戦を風刺する漫画を掲載したことがきっかけで起きたとされたからだ。
「大砲とスタンプ」「靴ずれ戦線」などの作品がある漫画家の速水螺旋人さんは2015年1月8日、ツイッターでそのことを持ち出した。
まず、日本の商業媒体で突っ込んだイスラムネタをやろうとすると、「いやーアレはシャレになってないから」と苦笑とも半笑いともつかない表情で返されると告白した。さらに、作者自身も「まあここは突っ張るところじゃないかー」と素直に引き下がったりするとして、そうした状況について、「イラッとするところ」だと漏らした。
過去には、お笑いコンビ「爆笑問題」の太田光さん(49)も、イスラムネタについてその現状を話している。
太田さんは、政治家もネタにしており、その自粛をNHKに求められたと1月7日のラジオ番組で漏らして波紋を呼んだほどだ。しかし、そのNHKで09年4月14日に放送されたバラエティ番組「爆笑問題のニッポンの教養」では、「イスラムっていう話題のときはちょっと怖いですよ」と明かしていた。
過激派を刺激しかねないものは排除
反イスラム的ともされた「悪魔の詩」を翻訳した筑波大学教授が1991年に何者かに刺殺されたことを引き合いに、太田光さんは、番組の中でこう漏らした。
「そうするとイスラムにとってのああいう風刺画であるとか、いわゆる神を冒涜するようなものっていうのは、シャレにもならないっていう」
太田さんのこの発言は、匿名のブログ「見えない道場本舗」で2015年1月8日に紹介されている。
実際、日本では、シャルリー・エブド紙のように、イスラム教をネタに風刺漫画などを載せるようなメディアはこれまでに出ていない。むしろ過激派を刺激しかねないようなものは排除しているのが実態のようだ。
ロックバンド「BUCK-TICK」が1995年に「楽園」の曲の間奏にコーランを逆再生したものを無断使用したときは、コーラン部分がカットされた修正版に差し替えられている。また、キリスト教や仏教をネタにしている中村光さん作の漫画「聖☆おにいさん」では、イスラム教については触れられておらず、ネット上でも、そのことが話題になっていた。