就職が決まっていた大学にメールや電話で批判が殺到
週刊文春は、この1991年の記事について、2014年2月6日号で「『慰安婦捏造』朝日新聞記者がお嬢様大学教授に」と題するキャンペーン記事で批判。記事では、西岡力・東京基督教大教授が金さんについて、
「親に身売りされて慰安婦になったと訴状に書き、韓国紙の取材にもそう答えている。植村氏はそうした事実に触れずに強制連行があったかのように記事を書いており、捏造記事と言っても過言ではありません」
とコメント、植村氏を非難した。西岡氏は同様の主張を別の論文でも展開している。
植村氏の説明によると、文春記事の影響で、就職が決まっていた神戸松蔭女子学院大学(神戸市)にメールや電話で批判が殺到し、就職話は立ち消えに。非常勤として勤務している北星学園大学にも抗議の電話が相次ぎ、その内容がネット上に拡散されたケースもあった。
娘の写真がネット上にさらされ、「こいつの父親のせいで、どれだけ日本人が苦労したことか」「自殺するまで追い込むしかない」などと誹謗中傷が相次いだ。非公開のはずの自宅住所や電話番号もネット上に拡散された。
植村氏は提訴の理由を、
「こうした、週刊文春の『捏造』というレッテル貼り、そして西岡氏の言説が、結果的にこうした状況を引き起こしたのではないかと思っている。言論の場でも手記を発表して反論している。それだけではなく、法廷の場でも捏造記者でないことを認めていただこうと思っている」
と説明した。訴訟は週刊文春の版元の文藝春秋と西岡氏を相手取って起こされ、(1)インターネットからの西岡氏論文の削除(2)謝罪広告の掲載(3)損害賠償として1650万円の支払い、の3点を求めている。
西岡氏は文春記事の中で、植村氏の記事が「強制連行」があったかのような内容だったとして「捏造」だと主張している。ただ、植村氏の記事では、金さんについては、
「女性の話によると、中国東北部で生まれ、17歳の時、だまされて慰安婦にされた。2、300人の部隊がいる中国南部の慰安所に連れて行かれた」
と書かれているに過ぎない。植村氏はこれを根拠に、そもそも「強制連行」があったとは伝えていないことから「捏造」はないとしている。