日本の製造業発展の一つのお手本
東レの快進撃はファーストリテイリングとの連携でも浮かび上がる。両社の関係は約20年前から始まったが、元々は東レが繊維を納めるだけの取引だったという。しかし、繊維分野でアジア勢が台頭する中、東レは「繊維を供給するだけでは将来にわたり生き残れない」と判断。商品そのものの企画・開発段階からファーストリテイリングと積極的に関わり、ロングランの機能性肌着「ヒートテック」を生み出した。「世界展開を加速するファーストリテイリングとうまく協業したことで、繊維の販路拡大につなげた」(繊維業界関係者)と評価される。
先見性と粘り強さから、技術開発を怠らず、ボーイングやファーストリテイリングなどの大口顧客をつかんだことが現在の繁栄に結びついているわけで、日本の製造業発展の一つのお手本と言えるだろう。
ただ、この状況が永遠に続く保証はない。次の時代に向けた炭素繊維拡大のカギは自動車分野だとされている。高級車向けだけでなく、量産車への採用を実現することが重要だ。この分野では、帝人が米ゼネラル・モーターズ(GM)と提携するなど勢いがある。
一方、鉄鋼メーカーは自動車向け鋼板の軽量化に総力をあげており、東レの前に立ちはだかる壁は厚い。また、ファーストリテイリングとの協業である「ヒートテック」も今や「頭打ちではないか」(流通関係者)との見方も出ている。将来の市場の見通しとたゆまぬ技術革新への努力は"絶好調"の東レにとっても欠かせないのは言うまでもない。