スズキの軽自動車「アルト」の燃費(JC08モード)が、ガソリン1リットル当たり37.0キロとなり、これまでガソリンエンジンでトップだったライバルの「ダイハツミラ イース」(35.2キロ)を上回り、ハイブリッドカー(HV)の「トヨタアクア」と並んだ。
この燃費はプラグインハイブリッドカー(PHV)を除けば世界一。スズキはガソリンエンジンの改良や軽量化で、HVと並ぶ世界一の低燃費を実現した。
車体の軽量化が貢献
スズキアルトは5年ぶりのフルモデルチェンジで、1979年発表の初代以来、8代目となる。スズキの鈴木修会長兼社長は「我々の軽自動車はアルトから始まってワゴンR、ハスラーと進化し、幅広くなってきたが、原点はアルトだと思っている」と語った。
スズキによると、「世界一」の燃費達成に最も貢献したのは軽量化だ。「新たに開発したプラットフォームを初めて採用し、徹底した軽量化で前モデル比60キロの軽量化を実現した」という。60キロの軽量化とは、軽自動車の場合、車両重量の約1割に当たる画期的な値だ。8代目のアルトの車両重量は610キロと、4人乗り軽自動車では最軽量となった。
エンジンは圧縮比を上げたほか、吸気、排気系を新設計し、「低中速の動力性能を高めたうえで、燃費性能を大きく向上させた」という。CVT(無段変速機)も変速比を最適化して効率化を図るなど、「低燃費と軽快でしっかりした走りの両立」を目指したという。
軽自動車とHVは熾烈な燃費競争を繰り広げている。これまでガソリンエンジン車の燃費トップは、同じく軽自動車のダイハツミラ イースが2014年7月のマイナーチェンジで達成した35.2キロだった。この時は、それまでトップだったスズキのアルトエコ(35.0キロ)を僅差で抜き去り、軽はもちろん、HV車を除くガソリン車の頂点に立った。あれから、わずか5か月。今度はスズキが37.0キロと大差をつけて抜き返したほか、初めてトヨタのHV、アクアに並び、世界一の燃費をガソリンエンジンで達成した。
抜かれたら半年以内に抜き返せ
軽の燃費性能をめぐっては、スズキとダイハツが2011年秋以降、数か月単位で抜きつ抜かれつの激しい競争を繰り広げている。スズキの鈴木修会長兼社長はスズキがライバルに抜かれた場合、「6か月以内に追いつかなければならない」と公言していたが、今回はまさに公約通りリベンジを果たしたことになる。
軽自動車は「軽量化を優先するため、モーターや電池を積むHV化は難しい」(軽メーカー開発者)とされている。このため軽はガソリンエンジンの改良や軽量化で燃費を稼ぎ、リッターカー以上の小型・普通車はHVやディーゼルエンジンを積むことで、燃費を向上させるのが主流となっている。
HVの世界では、トヨタアクアをホンダの「フィットハイブリッド」(36.4キロ)が僅差で追っており、こちらも熾烈な首位争いをしている。アルトの37.0キロ達成で、HVはもちろん、軽自動車もリッター40キロの低燃費の実現が視野に入ってきた。今のところ、この頂上レースに参加しているのはトヨタ、ホンダ、スズキ、ダイハツの4社だ。日本メーカーのさらなる一手が注目される。