ゴタゴタ続きの朝日新聞がまたしても記事の内容をめぐって、一悶着が起きてしまった。
記事中で、作品の背景を忖度された漫画家は「思ってねーよ」とツイッターで反論、コメントを寄せた評論家も「意図と異なる」まとめ方をされたと困惑している。
「うしおととら」は「経済成長や科学万能主義が背景」だった?
注文が付けられたのは2015年1月6日の朝刊に掲載された、連載「弱さの強さ 成熟社会を生きる」の第2回「妖怪と友だちと同調圧力」だ。「妖怪ウォッチ」や「ゲゲゲの鬼太郎」など漫画やアニメを例に、妖怪との関係性を交えて人間社会を考察する記事だ。
その中で文芸評論家の東雅夫さんのコメントが紹介された。1990年代に「週刊少年サンデー」で連載された藤田和日郎さんの代表作「うしおととら」について、登場するキャラクターを「西洋の怪物に近い妖怪」とし、人間と妖怪が戦うストーリーを、
「経済成長や科学万能主義が背景にある。作者は批判を込めて描いているが、ひたすら強さを追求し、人間の力で自然が思い通りになるとする土壌があった」
と評論する内容だった。
これに藤田さんはツイッターで反論。記事を引用し「思ってねーよ」とつぶやいた。「もう描いちまったことはしょうがないし、受け取り方は読者の方々にお任せして文句はありませんわ」と問題視しない姿勢だが、「でも、思ってないって言う事実ぐらいは言ってイイでしょう?」と念押しした。
つぶやきは6万人以上のフォロワーを中心に、瞬く間にネットで拡散。記事を読んだ、長年の藤田さんファンの30代男性も「少年誌で連載されていたこともあり、社会風刺よりもあくまで娯楽を意識された作品だったのでは」と首をかしげる内容だという。
こうした反応に困惑したのは東さんだ。編集顧問を務める怪談文芸専門誌「幽」の公式ツイッターを通し、藤田さんに「言葉足らずなコメントで大変失礼いたしました」と謝罪。記事中のコメントは担当記者に話した「ごくごく一部を切り取られて掲げられるため、こちらの意図とは異なる」というのだ。
コメントは「うしおととら」だけの話じゃなかった
東さんはJ-CASTニュースの取材に対し、「コメントした部分は社会の変化と妖怪表現の変遷を語った中のごく一部であり、『うしおととら』だけへの言及ではありません」と説明した。事前に記者からコメント部分は確認していたが、「非常に限られた字数の中に多くが盛り込まれた結果、本来の意図とは少し違うニュアンスになった」という。
ただ、藤田さんからは「部分抜粋を取り上げられて不本意でしょうに、わざわざのお言葉ありがとうございます」「いつの日か楽しく妖怪のお話をしましょうね」とツイッター上で言葉をかけられた。東さんは「事前にコメント確認したのですから朝日側に修正などは求めません。本来の妖怪論は今後、評論の形できちんと書くつもりです」とのことだ。
藤田さんも「という事で、昨日の新聞のうしおととらの件は終わり。文章に対しておれが反応しただけ。ハハハ、あんまりオオゴトにすんなよなー」としている。