北海道と北陸の整備新幹線の延伸を前倒しする計画が固まりつつある。ただ、将来JR各社が得る新幹線の運行収益を担保に金を借りる、借金の金利を安めに見直す、地元と国の負担を増やす――など、「ガラス細工の資金繰り」(政府関係者)との見方もある。
そもそも「需要が想定通りにあるか」など、従来からの不確定な要素もあり、慎重な運営を求める声が高まる可能性もある。
開業の経済効果を高める狙い
前倒しの検討対象となっているのは、北海道新幹線の新函館北斗~札幌間(211キロ、2035年度開業予定)と、北陸新幹線の金沢~敦賀間(113キロ、2025年度開業予定)だ。北海道は新青森~新函館北斗間(149キロ)が2016年3月、北陸は長野~金沢間(240キロ)が2015年3月に開業が迫っており、函館や金沢などでは新幹線がもたらす経済効果などに期待が高まっている。こうした中、それぞれの延伸区間について開業を前倒しすることで、経済効果をより向上させようというのが、与党や国土交通省の主張だ。
ちなみにもう一つの建設中の整備新幹線、九州新幹線長崎ルート(武雄温泉~長崎=67キロ、2022年度開業予定)も前倒しを求める声はあるが、地元負担が増えることもあって本格的な議論にはいたらなかった模様だ。
長崎ルートについて付け加えると、67キロで完結するわけではない。在来線の武雄温泉~新鳥栖と九州新幹線鹿児島ルートの新鳥栖~博多間を活用。在来線も使える「フリーゲージ車両」を使うことで2022年度に博多~長崎間で新幹線を運転するもので、山陽新幹線への乗り入れも検討されている。フリーゲージ車両の導入は北陸新幹線の敦賀~大阪間でも検討されているほか、札幌から旭川への延伸や岡山と高知を結ぶ「四国新幹線」でも構想として温められている。