トヨタ自動車の2014年の世界販売台数(子会社のダイハツ工業、日野自動車を含む)は、終わってみれば世界首位を3年連続で維持する結果になりそうだ。独フォルクスワーゲン(VW)が猛追しているものの、VWが得意とする中国市場の伸びが鈍化していることなどが影響し、辛うじて逃げ切った模様。
ただ、トヨタ、VWに米ゼネラル・モーターズ(GM)を加えた「世界3強」はいずれも年間1000万台規模で並んでおり、2015年以降は3社の順位変動が起きる可能性もある。
中国市場の伸びが鈍化
トヨタの2014年1~11月の販売台数は前年同期比2.3%増の930万4000台。このうち、主力のトヨタ本体で見ると、日本国内は4月の消費増税後の販売低迷が響き、1~3月の駆け込み需要の「貯金」を取り崩してしまう形となり、前年同期比1.3%減の145万6000台。一方、景気回復が続く米国は5.3%増の234万7000台、「尖閣諸島問題」など日中関係悪化の影響がここへきて緩和されている中国が12.2%増の90万7000台と大幅に伸びた。
トヨタは2014年の世界販売計画を1022万台としている。11月までの実績を踏まえればこの計画がほぼ達成される見通しで、暦年で自動車メーカー初の1000万台超えが実現する。
対するVWの2014年1~11月の世界販売(商用車の子会社を除く)は、4.6%増の約908万台。商用車を入れると約926万台程度となった模様で、11月までのトヨタとの差は4万台程度。2013年は商用車を含めたVWグループ全体でトヨタ(998万台)に次ぐ2位(973万台)と25万台ほどの差があったが、その差はかなり縮んでいる。
しかし、VWにとって問題は国外勢としてシェアトップをGMと争う中国市場全体の伸びの鈍化だ。2013年に前年比13・9%増の2198万台と初の2000万台超えを果たし「世界トップ市場」。ところが2014年に入って景気減速の影響で伸び率が鈍り、1~11月は6.1%増の2107万台。2014年年間は当初予想された2400万台には届かず、2300万台程度にとどまる見通しだ。伸び率は年前半から年後半にかけて縮小を続けており、これが中国を得意とするVW、さらにGMの世界販売台数に影響しているわけだ。
タカタ製エアバッグ問題の影響が心配
もちろんトヨタも中国市場の減速と無縁ではないが、もともとシェアが低い分、トヨタの世界販売台数への影響は限定的。景気とは別の問題である「日中関係改善分の伸びしろ」もある。他方、VWはトヨタが得意とし、景気回復やガソリン安で市場がなお拡大し続ける米国で存在感を発揮できないままだ。こうしたことから、トヨタが何とか首位をキープしたまま逃げ切る、という見方が大勢だ。2013年に971万台で3位だったGMは月次データを公表していないが、トヨタには届かない見通し。
トヨタは2008年に創業以来、初の世界首位に立った。それまではGMが77年間、不動の首位の座にあった。GMの創業は1908年。1931年に米フォード・モーターを抜いて世界首位に立った後はトップを独走。1978年には史上最多の世界販売955万台を記録した。トヨタは2000年代以降世界で拡大路線を歩む中で新興国の需要増も重なり、GMを2008年に抜き去った。その後、東日本大震災による大減産に見舞われた2011年に首位をGMに譲ったのを除いてトヨタはトップを維持してきた。
しかし、2015年は混沌としている。タカタ製エアバッグ問題がトヨタに影響しないとも限らないし、鈍化するとは言ってもVWやGMの得意な中国市場が伸び続けているのも確かで、熾烈なデッドヒートが年頭から始まる。