2015年は日韓国交正常化50周年にあたる。だが、新年早々島根県の竹島(韓国名・独島)をめぐる問題が火種になりそうだ。日本政府がユーチューブに公開した動画を韓国側が「重大な挑発」だとして、日本側に抗議をしているためだ。
動画は、竹島の自然をテーマにした絵本の作者がその内容を読み聞かせるという内容。大半が穏やかな内容だが、小学生を対象にしている点を韓国側が警戒したのか、「とんでもない領有権主張を含んでいる」と反発している。
小学生に「夏休みの自由研究にもなるよ!」とアピール
聯合ニュースやSBSテレビによると、韓国外交部の魯光鎰(ノ・グァンイル)報道官は1月6日の定例会見で、
「韓日国交正常化50周年を迎える時期に、日本政府が私たちの固有の領土である独島について、とんでもない領有権主張を含んだ動画を公開することで重大な挑発をした。これを即刻中断することを厳重に促す」
と述べ、動画の公開中止を求めた。1月5日には日本大使館関係者を呼んで抗議したという。
韓国側が問題視している動画は日本政府の内閣官房「領土・主権対策企画調整室」が制作し、2014年12月24日にユーチューブにアップロードされた。翌12月25日にはウェブサイトからもリンクされた。動画の長さは約17分。竹島にいたニホンアシカと、島根県の隠岐島民の交流を描いた絵本「メチのいた島―語り伝える恵み豊かな島 竹島」(山陰中央新報社)を、作者の杉原由美子さんが小学生に向けて読み聞かせるという内容だ。
島根県の「竹島資料室」では、夏休み期間に杉原さんによる「絵本を読む会」を開催。小学生が対象で、募集チラシでは「夏休みの自由研究にもなるよ!」とうたっていた。こういった読み聞かせを動画に収録したようだ。
「韓国が李承晩ラインという線を海に引いてしまい、近寄ってはいけない島に」
杉原さんは、漁民がアシカと仲良くしている絵を示しながら、
「こんな世界が、80年ぐらい前に実際にあったんですね。すごいと思いますね。やってみたいよね?」
などと語りかけ、竹島を韓国が不法占拠している現状にも触れた。
「ところが、そんな豊かな恵みの島、竹島に、近寄ることもできなくなりました。昭和16年に太平洋戦争が始まり、危険なため竹島での漁はできなくなりました。また、昭和27年には、韓国が李承晩ラインという線を海に引いてしまい、近寄ってはいけない島になってしまいました。今も、近寄ることはできません」
読み聞かせは、「日本の竹島が...」と、日本の領有権を主張して締めくくられる。
「竹島は、今も日本固有の領土です。メチ(編注:ニホンアシカの現地での呼び名)と遊んだ子どもたちは、大人になったら竹島で漁をしたいという夢を持っていました。江戸時代から日本人が竹島で漁をしていました。また、竹島は一度も他の国の領土であったことがない島です。大人になった今も、久見(編注:隠岐郡隠岐の島町の地名)の漁師さんたちは遠く竹島の方を見つめながら、漁に行けるようになる日が来ることを願っています。(絵を示しながら)これは、今の久見地区の様子です。波の向こうで、日本の竹島が、今日も私たちを待っています」
小学生を対象にした点を特に問題視
魯報道官は、動画が小学生を対象にしている点を特に問題視しているようだ。
「特に、歪曲された歴史が収録されている動画が小学生を含む未来を担う若い世代を対象にしていることが、さらに大きな懸念材料だ。国際社会で正しい歴史教育が求められていることにも反しており、日本の未来のためにも不幸なことだ」
韓国側がここまで強く反発する背景には、そもそも韓国側が竹島問題に対する態度を硬化させていることがありそうだ。1月6日に韓国の国防省が発表した国防白書では、日本の竹島ついての領有権の主張を「両国関係の未来志向的な発展に対する障害要素」だとして「厳重に対処していく」とうたっている。12年の白書では、日本側の領有権主張について「両国国防交流協力の未来志向的な発展のために克服しなければならない要素として残っている」と表現するにとどめていた。
動画は現時点では1万6000回程度再生されており、コメント欄では日本語と韓国語で互いの主張を罵倒し合う状態が続いている。日本語のコメントの中には、再生回数の少なさを批判する声も目立つ。