「負の連鎖」を断ち切れるか
2013年1月には、国内での総合飲料事業をてがける中間持ち株会社のキリンを設立。キリンビール、清涼飲料のキリンビバレッジ、ワインのメルシャンを統括し、飲料におけるキリンブランドの向上を図った。国内で資金を確保し、海外で投資を進める狙いだったが、組織が複雑になって責任の所在や情報共有がうまくいかず、狙い通りに収益力を高めることはできなかった。
三宅時代の「負の連鎖」を断ち切り、輝きを取り戻せるかが磯崎氏に課せられた大きな課題だ。まずはキリンHD、キリンのそれぞれの取締役が自社の執行役員を兼務し、さらに両社間でも執行役員を兼務することで、一体的、機動的な運営を図る。さらに海外事業強化のために、ブラジルキリンやキリンホールディングスシンガポール社について、HDに担当役員を置く。
磯崎氏は、営業、海外、経営企画など幅広い部門を渡り歩き、早くからポスト三宅の「本命」と目されていた人物。三宅氏は新人事発表の記者会見で、磯崎氏を後継指名した理由について「大きな組織を引っ張る求心力が必要。経営者としての視点、粘り強さ、リーダーシップなどを高く評価している」と述べた。一方、磯崎氏は「(キリンが)復活できるか否かは、今後数年の取り組みにかかっている」と背水の陣で改革に取り組む覚悟を強調した。磯崎氏がキリンを変えていくことができるのか、注目される。