日立、スイスの重電大手と合弁 電力システム改革にらみ「大きな連携」へ

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   日立製作所はスイスの重電大手ABBと、高効率の送電システム事業をてがける合弁会社を設立する。

   日立の中西宏明会長が、1年以上前からABBにラブコールを送り、ようやく合弁設立に漕ぎ着けた。事業の選択と集中を進める日立の新たな一手というわけだ。

ABBの強みは最先端の技術力

事業の「選択と集中」進める(画像は日立製作所のホームページ)
事業の「選択と集中」進める(画像は日立製作所のホームページ)

   国内では発送電分離などの電力システム改革によって、送電システムの需要が大幅に増えると見込まれている。そんな市場の変化をにらみ、高い技術力を持つABBと組むことで、需要を取り込むみたいというのが日立の考えだ。

   2014年12月16日の発表によると、新会社は日立が51%、ABBが49%を出資し、来年4月をメドに設立予定。拠点は東京に置く。経営トップも日立が送り込む。

   ABBはスウェーデンとスイスの企業が合併し、1988年に発足した重電企業。電力と工場の自動化システムが主力で、日本を含む世界約100か国に拠点を持ち、14万5000人の従業員が働く。年間売上高は418億ドル(約5兆円)と日立の半分強だが、それでも三菱重工業より売り上げ規模は大きい。

   ABBの強みは、最先端の技術力。長距離でも効率よく送電できる「高圧直流送電」と呼ばれる分野で、世界の半分近くを納入。より安定して電力供給できる新方式を1990年代に、世界で初めて採用し、高い納入実績がある。

   対する日立も1970年代から、国内で「高圧直流送電」プロジェクトに参画してきたが、こちらは一世代前の方式。そこでABBの先端技術に目をつけたわけだ。これと、日立の強固な営業力、プロジェクトをまとめ上げる力を組み合わせ、電力会社などに売り込みたい考えだ。

市場の変化に先手

   国内では2016年に電力小売りが完全に自由化され、2018年には大手電力会社の発電部門と送配電部門の分離も実施される見通し。従来の地域を越えた電力融通が進むほか、太陽光や洋上風力発電などが増え、送電システムの需要も高まる見通しだ。ABBとの協業は、こうした変化に先手を打ち、競争を優位に進めるという国内向けが第一の狙いだ。

   同時に、今回の合弁には海外での展開も視野に入っている。新興国では電力の効率的な安定供給は大きな課題で、今後、需要が確実に高まる。中西会長は12月16日、ABBのウルリッヒ・シュピースホーファーCEO(最高経営責任者)とともに記者会見し、「より広範囲な協業を検討していく。パートナーシップを今後大いに発展させ、ウィンウィンの新しい関係を作っていきたい」と提携拡大への意欲を隠さなかった。送電分野の海外展開だけでなく、工場の自動化システムなどでの提携に発展する可能性もあるという。

   日立の背中を押すのは、世界の重電業界で加速する再編の流れだ。世界首位の米ゼネラル・エレクトリック(GE)は今年、仏アルストムのガスタービン事業買収、送配電事業での合弁会社設立で合意した。アルストムを巡っては、三菱重工・独シーメンス連合も提携に名乗りを上げ、争奪戦に敗れた経緯がある。その三菱重工は今年2月、日立と火力発電部門を統合している。いずれも規模を拡大して世界的な競争に勝ち抜くのが狙いだ。

   今回の合弁設立はまだ小さな動きに過ぎないが、今後大きな連携に発展する可能性を秘めているだけに、日立とABBの今後の動向に注目が集まりそうだ。

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