市場の変化に先手
国内では2016年に電力小売りが完全に自由化され、2018年には大手電力会社の発電部門と送配電部門の分離も実施される見通し。従来の地域を越えた電力融通が進むほか、太陽光や洋上風力発電などが増え、送電システムの需要も高まる見通しだ。ABBとの協業は、こうした変化に先手を打ち、競争を優位に進めるという国内向けが第一の狙いだ。
同時に、今回の合弁には海外での展開も視野に入っている。新興国では電力の効率的な安定供給は大きな課題で、今後、需要が確実に高まる。中西会長は12月16日、ABBのウルリッヒ・シュピースホーファーCEO(最高経営責任者)とともに記者会見し、「より広範囲な協業を検討していく。パートナーシップを今後大いに発展させ、ウィンウィンの新しい関係を作っていきたい」と提携拡大への意欲を隠さなかった。送電分野の海外展開だけでなく、工場の自動化システムなどでの提携に発展する可能性もあるという。
日立の背中を押すのは、世界の重電業界で加速する再編の流れだ。世界首位の米ゼネラル・エレクトリック(GE)は今年、仏アルストムのガスタービン事業買収、送配電事業での合弁会社設立で合意した。アルストムを巡っては、三菱重工・独シーメンス連合も提携に名乗りを上げ、争奪戦に敗れた経緯がある。その三菱重工は今年2月、日立と火力発電部門を統合している。いずれも規模を拡大して世界的な競争に勝ち抜くのが狙いだ。
今回の合弁設立はまだ小さな動きに過ぎないが、今後大きな連携に発展する可能性を秘めているだけに、日立とABBの今後の動向に注目が集まりそうだ。