円安や免税対象品目の拡大で、中国をはじめとするアジアからの訪日外国人が増加している。思わぬ余波に見舞われたのが北海道・新千歳空港だ。
年末年始、旅行で大量のお土産を買いこみ、帰途につく大勢の外国人観光客で新千歳空港の国際線ターミナルは大混雑。航空会社のカウンターや出国審査と、あちこちで順番待ちの長い列ができた。
北京、ソウル、台北、香港...午後の早い時間はラッシュアワー
新千歳空港の国際線出発ロビーで、お土産と「格闘」する外国人観光客。強引にスーツケースに詰め込むがなかなか閉まらない。別の人は、カートに段ボール箱が山積みだ。「日本のお菓子はおいしい」と、何ケースも買っていくのだという。2015年1月5日放送のNHK「ニュースウォッチ9」は、主に中国や台湾、香港からの観光客でごった返す様子を報じた。
同空港の国際線利用客はここ数年、増え続けている。北海道千歳市の統計によると、2011年の84万2000人から12年には107万9000人、13年は127万人と2年間で1.5倍に増えた。14年は11月時点で前年を突破しており、過去最高の更新が確実となった。日本から海外に出発する人も含むが、訪日外国人の増加が貢献しているようだ。
現在、新千歳空港に乗り入れている路線はアジア便が多い。中国とは北京と上海を結び、韓国・ソウルには1日3~4便が飛んでいる。台北や香港にも、毎日運航する便がある。格安航空会社(LCC)も少なくない。
午後の早い時間帯はラッシュアワーだ。曜日にもよるが、例えば2015年1月6日の場合、13時台は上海行きが2便に北京と台北行き各1便。14時台はソウル行きと台北行きが1便ずつ、15時~16時に香港行き2便と台北行き、ソウル行き各1便が続々と飛び立つスケジュールとなっている。当然、これらの便に乗り込む人たちが空港に押し寄せ、出国手続きに臨む。
ただでさえ混雑する時間帯が集中しているのに、円安に加えて食品や化粧品など免税対象が拡大した恩恵を受けて外国人観光客が大量のお土産を手にしているケースが多いため、手続きに時間がかかる。航空会社のチェックインカウンターでは、搭乗客が機内に持ち込むため預けた手荷物の数が多すぎて、ベルトコンベヤーが詰まっている様子を「ニュースウォッチ9」では映していた。荷物の中身を確認するX線検査機の処理能力が限界を超えてしまったのだという。
アジアの航空会社が2年間で続々と就航
新千歳空港との定期運航路線は増加を続けている。2012年にハワイアン航空(米)、トランスアジア航空(台湾)、タイ国際航空(タイ)が、翌13年になるとティーウェイ航空(韓国)、香港航空(香港)、春秋航空(中国)が、それぞれ就航した。増便を望んでいる航空会社もあるそうだ。
観光地として見どころが多く、食の面でもバラエティー豊かな北海道。特に中国で高く評価されているが、今後も人気が衰えることはない見込みだ。2015年1月1日付の北海道新聞電子版によると、同紙が北京、広東省広州、浙江省杭州の主要旅行会社7社にアンケートを実施したところ、今年は前年比で最少でもプラス20%、最大で2.8倍の中国人観光客の北海道訪問が見込まれるとの結果が出たという。
日本政府観光局が2014年12月17日に発表した、同年11月の訪日中国人の数は20万7500人で、前年同月比で倍増。その理由のひとつに「北海道方面への新規就航を中心とした座席供給量の増加」を挙げている。北海道の観光業にとって、展望は明るいと言えよう。
しかし「空の玄関口」となる新千歳空港の外国人観光客の受け入れ態勢は、年末年始のパンク気味の様子を見る限り今のままでは気がかりだ。地方紙・苫小牧民報社の「WEBみんぽう」は2014年12月31日、国際線利用客による混雑の対策として、警備員の増員や出国審査時間の30分前倒しを実施したと報じた。同空港を所管する国土交通省新千歳空港事務所も、今後対応策を検討するとしている。
その国交省は2020年の東京五輪開催に向けて「訪日外国人旅行者数2000万人」を掲げており、外国からの訪問者を積極的に迎える姿勢だ。円安を含めて「追い風」が吹いているうちに、国際線ターミナルの混雑緩和のための抜本的な解決が望まれる。