インドネシア沖に墜落してから1週間以上が経つエアアジア機の捜索は、難航している。現地の悪天候が原因で、海中の視界が悪い上に潮の流れが速いためにダイバーの活動が難しくなっているためだ。
いまだに操縦室内の会話や飛行データを記録したブラックボックスは回収されておらず、原因究明も進んでいない。一度は着水に成功し、乗客が脱出を試みた形跡があるとも指摘されている。トラブルが発生した原因も「着氷」と「失速」の2つの説が指摘されており、情報は錯そうしている。
5つの大きな破片を発見、37人の遺体を収容
捜索が続いているのは、エアアジアの関連会社、エアアジア・インドネシアが運航していたQZ8501便。2015年12月28日朝、インドネシア第2の都市スラバヤからシンガポールに乗員乗客162人を乗せて向かう途中で、カリマンタン島付近の海に墜落した。
1月5日時点で5つの大きな破片が発見され、37人の遺体を収容されている。生存者は確認されていない。5つの破片のうち、最も大きいものは水深30メートルに沈んでいる全長18メートルのものだ。機体の一部だとみられ、今後の捜索の焦点になるが、実際の作業は難航している。
1月4日時点では、海底部分の視界はほとんどゼロで、ダイバーによる捜索も難しい状態だった。ロボットでの捜索も検討されているが、潮の流れが1ノット(時速約1.9キロ)未満でないと動かせない。実際の潮の流れは3~5ノット(時速5.5~9.3キロ)で、ロボットでの捜索も難しい。
雲を避けるために「信じられないほどの角度で急上昇」したという説も
墜落の原因としては、大きく2つの説が唱えられている。インドネシアの気象当局が1月2日に発表した報告書では、
「機体が交信を絶った地点から得られたデータに基づくと、天気が事故の引き金になった可能性がある」
と、天気が原因だとみている。報告書では事故機が積乱雲に突っ込んだとみられるとして、
「起きた可能性が最も高い現象は、冷却の過程でエンジンに損傷をもたらす可能性がある『着氷』だ」
と推測している。もっともこの推測には
「存在する気象データの分析に基づいて発生した出来事の可能性のひとつにすぎない」
という但し書きもある。
エンジン損傷とは別の墜落原因を唱える向きもある。失速説だ。ロイター通信によると、捜査当局がレーダーの記録を分析したところ、事故機は墜落前、雲を避けるために「信じられないほどの角度で急上昇」していたという。これが原因で失速したという見方だ。
AFP通信では、なんらかのトラブルが起こった後に水面着陸したという見方を紹介している。発見された遺体が大きな損傷を受けておらず、機体が空中分解した可能性は低い、というのがその理由だ。かなり早い段階で非常ドアや脱出用滑り台が回収されているため、着水後に実際に乗客が脱出を試みた可能性もある。だが、その後機体が高波に飲まれてしまい、脱出は成功しなかったとも記事は指摘している。
こういった要素を踏まえると、今でも海底の機体に多くの犠牲者が取り残されている可能性が高い。