カップ焼きそば「ペヤング」が、虫の混入騒動が原因で生産休止が続いている。関東地方の消費者になじみのあるペヤングが小売店の棚から消え、代わりに別の商品が穴を埋めているようだ。
インターネット上で話題になったのが、北海道でしか売られていないはずのカップ焼きそばだった。
旭川出身者は「カップ焼きそばといえばコレ」
東洋水産の「マルちゃん」ブランドのひとつ「やきそば弁当」は、北海道限定の商品だ。ところがツイッターで2015年1月4日、東京都内での「目撃情報」が投稿された。スーパーとみられる店舗内で、カップ焼きそばの陳列棚に「やきそば弁当」がずらりと並んでいる写真が載っている。だが東洋水産CSR広報部は電話取材に対して、「北海道限定なので、東京では基本的に販売されていません」と答えた。どういうことだろうか。
実はネット上には、過去にも「やきそば弁当」を首都圏で購入したとの体験談が寄せられていた。大手スーパーで「北海道フェア」や物産展を開催しているときに見つけたとの書き込みが数件ある。都内では、北海道の特産品を取り扱う「アンテナショップ」にも置かれているという投稿もあった。
東京・有楽町にあるアンテナショップ「北海道どさんこプラザ」に行くと、ネットの情報にあった通り「やきそば弁当」が売られていた。オリジナルの味は、店内にある各種めん商品のなかで「人気ナンバー2」と書かれている。ほかにも「塩味」「中華風醤油」があった。
記者が購入した商品を持ち帰り、社内にいた北海道旭川市出身の20代女性にパッケージを見せると、ニッコリと笑顔を浮かべて「懐かしい。東京でも買えるんですか」とたずねてきた。地元を離れるまで、北海道以外では売られていないと知らなかったそうだ。実家では「常備」されていて、「弟が部活の前によく食べていたのを記憶しています。カップ焼きそばといえばコレです」と話す。今でもふとした時に「そういえば最近食べてないな」と思い出し、帰省した際には食べたくなると明かした。
味はどうか。編集部内で、北海道出身者以外の部員に食後の感想を聞いた。「オリジナル味」を食べた20代男性は、他のカップ焼きそばと比べて「優しい味付けで飽きがこない。めんの量も十分」と高い評価だ。もうひとりの男性は「塩味」を担当。ジャガイモや赤ピーマンといった「かやく」の意外性、焼きそばにはつきものの青のりではなくパセリとブラックペッパーを振りかけるスタイル、めんを温めるために使用した「戻し湯」で付属のスープを作る発想にそれぞれ面白さを感じたと述べた。
小売店が独自に仕入れたとは考えにくい?
ツイッターに投稿された目撃情報には、販売店の具体的な店舗名や都内のどの場所かが書かれていない。「やきそば弁当」が棚に並んだのも、「北海道フェア」のような期間を区切っての販売なのか、「定番商品」として店に常備されるのか不明だ。
東洋水産は、あくまでも「北海道限定商品」だといい、本格進出を否定する。そうなると、メーカーが関知しないところで、小売店が独自に卸売業者から仕入れたのだろうか。しかし、以前食品メーカーで大手チェーンを担当していた40代男性に取材すると、「それはあまり考えられません」と話す。そのうえで「首都圏で、ある程度名の通ったスーパーなら店舗数がそれなりに多いので、メーカーの協力がないと数量の面で(各店に)商品をそろえるのは難しいはず」と指摘した。首都圏に強いペヤングが当面の販売休止で、棚のスペースがぽっかりと空いた。競合メーカーとしては「鬼のいぬ間」にシェアを奪おうと、小売店に対して積極的に提案をしてもなんら不思議はないというわけだ。敵失を利用したと言えば聞こえは悪いが、競争の激しい業界で生き残るためには責められる話ではないだろう。まして大消費地である首都圏で市場を拡大できるのなら、「一世一代のチャンス」となる可能性がある。
実際には今回、「やきそば弁当」の扱いを巡ってメーカーや小売店にどんな動きがあったかは分からず、推測の域を出ない。それでも、仮に首都圏の一定数の店舗で今後継続的に販売されるのであれば、ペヤングが「復帰」したときにどうなるか見ものだ。