日本文化を海外に売り込む官民ファンド「海外需要開拓支援機構(クールジャパン機構)」が2014年12月8日、ラーメン店「博多一風堂」を展開する「力の源ホールディングス(HD)」(福岡市)に対し、欧米や豪州での海外展開のために計約20億円を支援することを決めた。
同機構は2013年11月に海外進出を目指す企業を資金面から支援しようと設立された。今回で支援決定は8件目となるが、日本食が選ばれたのは初めてだという。
欧米への進出には高いハードル
ラーメンはロンドンやパリなど欧州でも人気が高まり、世界的ブームとなっている。多くのラーメン店が海外に進出するなか、力の源HDが支援対象に選ばれたのは「寿司と同じようにラーメンを世界中に広めたい」と積極的な海外展開を図る姿勢と、現在の進出状況などが評価されたからだ。
同HDは2008年にニューヨークに海外1号店を出店し、今では海外店舗は約50に上る。しかし、「欧米豪など西洋諸国では食文化の違い、出店コスト負担の重さ、人材確保の難しさ、食材調達の規制など解決しなければならないボトルネックが多い」(クールジャパン機構)ため、同HDの海外店舗も大半が中国や韓国などアジアが中心。欧米や豪州ではニューヨークやロンドン、シドニーの3都市5店舗にとどまっている。
この高い出店ハードルをクリアするため、同機構が約7億円の出資と最大13億円の融資枠を設定した。同HDは日本食を発信・普及させるための尖兵として、ラーメンに加えて現地の嗜好に合わせたサイドメニューを提供し、日本酒なども豊富に取りそろえた「博多一風堂」を展開していくという。
「ほかにもラーメン店はあるだろ」
ただ、この支援決定に対し、ネット上では批判が噴出。「特定企業や団体を特別扱いか」「税金で支援するのか」「ほかにもラーメン店はあるだろ」「民間から融資してもらえ」といった具合だ。
しかし、外食企業は資金調達力が低く、多店舗展開するうえで資金難に直面する傾向が強いとされる。同機構は自らの「ミッション」を「『日本の魅力』を産業化し、海外需要を獲得するため、リスクマネー供給を中核とした支援を行い、将来的には民間部門だけで継続的に事業展開できるような基盤整備をすること」と規定。それだけに海のものとも山のものともつかない事業の支援に尻込みする銀行に代わって面倒をみるというわけだ。当然、対象となるのは成功確率の高い有望事業に限られる。
今回の支援もラーメン店の出店だけが狙いではない。進出先の欧米などで食材の製造・供給拠点としてのセントラルキッチンの設立も含めたものであり、その地域に進出したり、これから進出したりする日系外食企業への食材供給も担うことになる。また、同HDは日本食普及に向け、日本酒関係団体などとも連携を検討していくという。