電車内でのベビーカー使用について、たたむべきか否か、そもそも使用を避けるべきなのか、この数年ずっと議論が続いている。
国土交通相が事務局となって有識者や業界団体などで構成される協議会が2014年3月、ベビーカーの統一マークを決定し、「たたまずに使用できる」という指針を出したものの、現場でのトラブルや苦情はなくなっていない。
JR東は新型列車にベビーカー向けスペース新設
これまで議論が続いてきた背景の1つに、鉄道各社の対応や規定がバラバラだったことが考えられる。マナー啓発や注意を呼びかけるポスターの掲示やパンフレットの配布を行う会社がある一方、国交省の調査によると13年6月の段階でベビーカー使用に関する規定がなく、案内も行っていない会社は3割を超えていた。
13年6月、鉄道だけでなく、バスや旅客船も対象にした「公共交通機関等におけるベビーカー利用に関する協議会」が発足、14年3月に意見を取りまとめた。子どもを抱っこしたり、荷物を持ったりしたままでベビーカーを折りたたむのは困難な場合が多く、不安定な状態で子どもを抱っこすると転倒の危険がある、などから、「たたまずに使用できるよう取り扱うことを基本とする」との指針を示した。たたむべきか否か、という論戦に一応の終止符が打たれた形だ。
協議会の決定を受け、各社も取り組みを加速した。東京メトロなど鉄道各社は車両内外に車いすマークと一緒にベビーカーマークを掲示したり、駅にポスターを貼ったりして、ベビーカーを使用する人だけでなく、周囲の乗客にも呼びかけるキャンペーンを実施した。また、JR東日本は15年秋、山手線に導入する新型列車の全車両にベビーカーや車いす使用者向けのフリースペースを設けることを発表した。