自動車部品大手、タカタ製の欠陥エアバッグ問題は、リコール(回収・無償修理)の対象台数が膨らんでいることで、同社の経営不安が取り沙汰される事態に進展している。
タカタは、エアバッグの世界シェアで第2位。ホンダやトヨタ自動車、ルノー・日産のみならず、独フォルクスワーゲンや米ゼネラルモーターズなど世界で採用されている。影響はとどまることを知らず、自動車業界の関係者のあいだでは「タカタは自力で存続できるのか」との声もある。
一部品メーカーで対応可能な範囲を超えている
タカタ製エアバッグのリコール対象台数は、国内で319万台(2014年12月12日時点)。海外では、タカタ製エアバッグを搭載している割合が高いホンダのリコールだけで約650万台にものぼる。
日米での調査リコールなども含め、日米欧でのリコール対象台数は3000万台を超える可能性も指摘され、空前の規模に達する。すでに国内でも交換部品が間に合わない事態が起きはじめている。
タカタの2015年3月期の最終損益(連結ベース)は250億円の赤字(前期は111億円の黒字)の見通し。従来予想は240億円の赤字だったが、エアバッグの追加のリコール対策費用として476億円の特別損失を計上。8月時点の想定よりも30億円弱膨らんだことで、赤字幅も広がった。
14年4~9月期の中間配当を見送ったほか、13年6月に就任したばかりのステファン・ストッカー社長が取締役に降格、高田重久会長が社長を兼務する人事を2014年12月24日に発表。あわせて高田氏が月額報酬の50%、ストッカー氏が30%、他の3人の取締役が20%を4か月間返上することを決めた。
円安による為替差益もあり、「最終赤字の拡大は小幅にとどまる」(タカタ)としているが、米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)はタカタ製の欠陥エアバッグについて、自動車メーカーを飛び越え、部品メーカーの同社に全米でリコールするよう要求している。これは異例なことだ。
しかし、タカタの高田重久会長は日本経済新聞(12月17日付)の取材に、各自動車メーカーのリコールには「全面的に協力する」とした。そのうえで、「(米当局のリコール要請については)現時点では応じられない」と、頑な姿勢を崩さない。
こうした対応の遅れなどを理由に、米当局から巨額の罰金を科される可能性があるばかりか、米国では同社に対する集団訴訟も起きている。さらに今後、自動車メーカーがリコールにかかった費用の損害賠償を求めてきた場合、「損失は1000億円を超える」との見方もある。
タカタの2014年9月末時点の純資産は1441億円。リコールは世界規模に拡大しており、一部品メーカーで対応可能な範囲を超えている。