広島と長崎に対する原爆投下をめぐり、ロシアで検証を求める動きが起きている。原爆投下は「人道に対する罪」で、「法的な評価」が必要だというのだ。
2015年が第二次世界大戦終結70年の節目にあたるというのがその理由だ。それでも唐突感は否めず、クリミア半島問題で冷え切った米ロ関係が影を落としているとの見方も出ている。
「人道に対する罪には時効はない」と「法的評価」求める
発言の主は、セルゲイ・ナルイシキン下院議長。国営イタル・タス通信によると、2014年12月25日に行われたロシア歴史学会の幹部会で、2015年がニュルンベルグ裁判と原爆投下から70年目にあたることを指摘し、原爆投下については「法的評価」が必要だと述べた。
「この問題を弁護士や国際法の専門家と議論すべきだ。人道に対する罪には時効はないからだ」
ナルイシキン氏は原爆投下には軍事的合理性がないとみており、それが検証を求める理由になっているようだ。
「軍事的観点からは、2つの平和な都市に爆撃した理由はまったく説明されていない、というのが一般的な理解だ。2つの平和な都市への爆撃には恐ろしい特徴があり、数十万人もの丸腰の市民の命を奪った」
米紙は「歴史修正主義」を警戒
こうした動きには、すでに米国から警戒する声が出ている。例えばロサンゼルス・タイムズはナルイシキン氏の発言をモスクワ発で報じる中で、ロシアの国会議員の中で歴史の見直しが相次いでいることを指摘している。具体的には、アフガニスタン侵攻を非難したソ連議会(当時)の1989年の声明を見直したり、クリミア州をロシアからウクライナ・ソビエト社会主義共和国に移管する1954年決定を無効にするように求めたりする動きだ。
ロサンゼルス・タイムズでは、こうした動きの背景には米ロ関係の悪化があり、
「歴史を書き換えようとする動きは、全体主義的なソ連の共産主義時代の特徴だと警告する人もいる」
と指摘している。