大リーグ行きか去就が注目されていた金子千尋投手がオリックスに残ることになった。
決まったのはクリスマスイブの2014年12月24日。日本球界にとってもいいプレゼントだった。
現在の「ナンバーワン投手」
金子の残留コメントに共鳴した野球人は多かった。
「毎年、いい投手がメジャーに行くのはどうなのか、と考えていた。日本の野球をもっと盛り上げて生きたい、という気持ちが強い」
現在の日本球界が抱える問題に、金子は鋭い言葉を投げかけた。
確かに、毎年のようにナンバーワン投子が日本を離れている。最近では、ダルビッシュ有、田中将大がそうだ。
マスメディアは、大リーグで投げる彼らを、より派手に扱う。そういった傾向に首をかしげる日本でプレーする選手たちは多い。金子はそれを代弁したといえるかも知れない。
金子は、各球団の4番打者が認める「現在のナンバーワン投手」である。日本ハムの打点王、中田は「顔を見るのも嫌」と言ったし、西武の本塁打王、中村も「打てる気がしない」
今シーズンは序盤こそつまずいたが、その後は順調に勝ち星を増やした。多彩な変化球を低めに集めるので、長打を浴びることが少ない。従って失点が少ない。最多勝と防御率の2タイトルを獲得、さらに沢村賞、パMVPを受賞した。なかでもMVPは優勝チームのソフトバンク勢を抑えての評価だった。
大リーグでも通用する
今シーズン終了後、FAを宣言。大リーグ行きを視野に入れていたという。その場合はポスティングシステムをつかうことになる。結論がなかなか出ないことから、日本球界は批判がマスコミから出た。
その間、右ヒジ悪化が表面化。これが大リーグ球団をたじろがせる原因となった、とも報じられた。
「4年契約、総額20億円」
オリックス残留のお値段である。彼の力からして当然の数字だろう。
大リーグが金子に4年契約は提示しないと思う。30歳の投手に提示できない年数だ。6年契約をした松坂、7年契約の田中は20代だったからである。
金子は間違いなく大リーグで通用する。いかにも日本の投手らしく、キメの細かい投球は喜ばれるだろう。不安とすれば、やはりヒジである。
大リーグのスカウトがちゅうちょするのも分かる。日本と違って大リーグは結果を厳しく問われ、すぐ解雇となる。
日本球界にしてみれば、金子が来年も投げるのは楽しみである。最近の数少ない「入場料を払ってもみたい投手」で、手厚い補強をしたオリックスは、優勝候補になる。
(敬称略 スポーツジャーナリスト・菅谷 齊)