東電は再値上げ見送り、関電は実施目指す 原発停止中で、2社がこれだけ違うのは

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   全国の原発がすべて停止する中、東京電力の数土文夫会長が2015年春に想定していた電気料金の再値上げを当面見送ることを表明した。一方、関西電力は2014年12月24日、15年4月からの値上げ実施を申請し、大手電力会社の対応が分かれた。

   2015年3月期決算も、東電が2期連続で経常黒字となるのに対して、関電は4期連続の経常赤字となる見通しだ。原発事故後、実質国有化となり、徹底したコスト削減を進める東電と、関電の経営判断は対照的な格好となった。

東電は2期連続で経常黒字を維持する見通し

「東電はもう仲間じゃない」(画像はイメージ)
「東電はもう仲間じゃない」(画像はイメージ)

   東電の数土会長は「料金値上げは年間1兆円近い消費者負担となり、競争の中で東電の売り上げと収益は低下の悪循環に陥る。来年1年間は値上げをしない」と、記者会見で力を込めた。その理由は簡単だ。東電は2014年度のコスト削減額が、同年1月に策定した再建計画(新総合特別事業計画)の目標だった5761億円から8370億円と改善し、2期連続で経常黒字を維持する見通しとなったからだ。

   国内の原発は2013年9月から全基停止しているが、その後の全国10電力の決算は明暗がはっきりしている。2014年3月期の最終利益で比較した場合、原発がない沖縄電力の黒字は別格として、原発停止でも黒字を確保したのは東京電力、東北電力、北陸電力の3社だった。残る関西電力、中部電力、北海道電力、中国電力、四国電力、九州電力の6社はいずれも最終赤字だった。

   このうち、原発停止後、家庭向けの電気料金を上げていないのは北陸と中国の2社だけ。北陸電力は水力発電の割合が高く、料金値上げがなくても黒字を確保する優等生だ。2014年9月中間決算では九電を除く9社が最終黒字を確保したが、通期では関電などが赤字となる見通しだ。

過去に例のない大幅なコスト削減や資産売却

   このため、関西電力の八木社長は「会社の存続が難しくなれば、電力の安定供給に支障が出る可能性がある」として、2015年4月に電気料金を再度値上げする方針を明らかにした。関西電力は高浜原発3、4号機の再稼動を目指しており、原子力規制委員会の新規制基準による審査が終了したことで、来春にも再稼動の見通しが出てきたが、「再値上げを実施せざるを得ない」という。

   東電と関電のこの差はどこから来るのか? 大手電力会社で組織する電気事業連合会(電事連)からは「東電は国営企業で、経済産業省の支配下にある。関電をはじめとする民間の電力会社とは何もかも文化が違う」(関係者)とボヤく声が聞こえる。かつて電事連の雄だった東電は「もはや自分たちの仲間ではない」(同)と言うのだ。

   2012年7月、政府の原子力損害賠償支援機構(当時)が東電に1兆円を出資し、発行済み株式総数の54.69%を握る筆頭株主となることで、東電は実質国有化となった。これを機に東電は原発事故補償の巨額費用を捻出するため、民間企業のノウハウを取り入れ、過去に例のない大幅なコスト削減や資産売却などに取り組み始めた。

「ユーザーの声に十分に耳を傾けてこなかった古い企業体質と戦っていく」

   東電の会長を務める数土氏はJFEホールディングス社長などを経て2014年4月、東電の会長に就任した。数土氏は旧川崎製鉄に入社後、NKKとの経営統合を推進し、JFEホールディングスを誕生させ、徹底した合理化で中国や韓国などとも戦える製鉄会社を築いた。2011年にはNHK経営委員長として受信料値下げを実現させるなど徹底した経営改革で知られる。

   その剛腕ぶりが政府に買われて東電会長に就任した数土氏は「この会社(東電)には、これまで原価計算、原価管理という考えが全く根付いていなかった」と漏らしており、「総括原価制度や地域独占に安住し、ユーザーの声に十分に耳を傾けてこなかった古い企業体質と戦っていく」と話している。

   その改革の成果が問われる中、東電が発表した2015年3月期の業績予想は、連結経常利益が2270億円、東電単体でも1790億円となり、いずれも前期から大幅な増益になる見通しとなった。電気料金の再値上げ見送りはユーザーにとって朗報だ。東電の再建計画は柏崎刈羽原発を再稼働させる前提だったが、原発なしでも目標を上回る黒字決算となり、政府・自民党にとっては何とも皮肉な結果とも言える。

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