デジタルコンテンツ事業の「面白法人 カヤック」が、東京証券取引所マザーズ市場に新規上場し、話題になっている。
給料をサイコロの出目で決めたり、新たなコンテンツをつくっては他社に次ぎ次ぎと売却してしまったりと、たしかに「ふつう」の企業とはちょっと違う、異色のベンチャー企業ではあるようだ。
「カヤック、上場するってよ」・・・
創業以来、「面白法人」を掲げる「カヤック」が東証マザーズに上場したのは2014年12月25日。そんなカヤックが同日付の日本経済新聞に、「上場のお知らせと関係者の方への感謝を込めて」出稿するはずだった、ボツになった広告がクスッと笑えて楽しい。
掲載された広告は、
「本日マザーズに上場しました。
ありがとうございます。 面白法人カヤック」
と、至ってマジメなのだが、同社はWEBサイトで「じつは他にも、考えていた案があった」として「ボツネタ」を公開した。
それが、これ。
「上場の奇妙な冒険、はじまる。」
「カヤック、上場するってよ」
「クリスマスに、上場の鐘を鳴らします。」
「上場だジョー」
と、まるでインターネットのカキコミのようなコピーだが、それがITベンチャーらしいといえば、そうなのかもしれない。
カヤックは「いろいろな案があったのですが、シンプルなものがいいだろうということになりました」と話す。
カヤックは1998年8月の設立、2005年1月に株式会社化した。13年12月期の業績は、売上高が28億円、営業利益、経常利益はともに2億円、当期純利益は1億円だった。
社員の90%がクリエイターで、「つくる人を増やす」という経営理念にもとづき、「事業内容はたった1つ、『ユーザーに楽しんでもらう面白コンテンツをつくる』です」と、柳澤大輔CEO(最高経営責任者)はブログに記している。
12月25日に公表した「成長可能性に関する説明資料」によると、事業の柱は、広告キャンペーンの企画・制作を受託する「クライアントワーク(広告)」事業と、「ぼくらの甲子園!」シリーズなどの「ソーシャルゲーム(コンテンツ)」事業。スマホゲームに特化するコミュニティ「Lobi」の運営の3つ。また、「地域を活発にし、日本を元気に」をモットーに、本社のある神奈川県・鎌倉をITで全力支援する「カマコンバレー」の設立に参加している。
ダメならすぐに撤退して、次のサービスの開発にトライ!
カヤックは、新たにつくったコンテンツや事業を次から次に他社へ売却してしまう。その理由について、同社は「面白法人は0から1をつくる集団」だから、と説明。「1のモノを100に伸ばすことより、0から1をつくることが得意な企業」なので、「いいものを生み出したら、いい得意先に売り出して、事業を伸ばしてもらう。それが僕らのやり方」という。
たとえば、世界初の声で遊ぶコミュニティ「Koebu」(会員数80万人、2014年)をサイバーエージェントグループに、また日本最大の建築家コミュニティ「HOUSECO」(3500人の建築家、2013年)をタマホームと合弁会社を設立して売却。総務情報サイトの「総務の森」はオフィス通販事業のカウネットに譲渡した。
もちろん、失敗作も数々ある。コンセプトは面白くても、斬新すぎたためにユーザーが集まらなかったり、収益面で苦戦を強いられたりしたために撤退を余儀なくされたサービス。「とにかく数を打つこと。ダメならすぐに撤退して、次のサービスの開発にトライすること。このスピード感がカヤックには重要」なのだそうだ。
株式上場について、CEOの柳澤大輔氏はブログでこう綴る。
「上場するということは一緒にカヤックをつくっていく仲間が増えるということだと考える。そういう風に世界を見ようと思うのです」
株主に対して「カヤックを一緒につくる仲間になってください」と訴え、上場の準備期間を振り返って、「上場するために決められたルールの大半は、『株主という仲間を増やして株式会社として成長し続けたいと思う会社』にとっては本質に適ったものであり、会社を強くするために必要なことばかりだったと認識しています」としている。
上場初日は買い気配のまま値が付かず、午前中は公開価格の560円を70%上回る気配値952円で取引を終了。結局、初値がつかずに引けた。
ちなみに、証券コードは「3904」。柳澤CEOは「社内的には『サンキューオモシロ』と呼んでいる」と明かしている。