「ナッツ姫」騒動に沈静化の兆しが見えない。当人の逮捕が現実味を帯びてきた中、今度はその妹までもが批判の矢面に引きずり出された。
「会社の過ちは誰か一人によってつくられるものではない。全ての社員の過ちだ」(韓国の大手紙・朝鮮日報より)
社内メールにこう綴ったのは、「ナッツ・リターン事件」で辞任に追い込まれた大韓航空の趙顕娥(チョ・ヒョンア)元副社長の妹、チョ・ヒョンミン専務だ。
一族の末娘はコネ入社、31歳で専務
このメールは姉へのバッシングが過熱する最中の2014年12月17日、自らの部下およそ50人に宛てて送られたもので、タイトルは「反省文」。報道によると、「過ちを二度と繰り返さないことを歯をかみしめて誓う」と遺憾の意を表する一方、上記のように大韓航空の組織風土に関する一連の問題は、「全ての社員の過ち」だとして、自身とともに反省することを求める内容だった。
一見するとまともなことを言っているようにも見えるが、問題を起こしたのは誰でもなく元副社長その人であり、しかもこのメールを書いたチョ専務はその身内だ。
チョ専務は元副社長の末妹で、現在31歳。韓国内では「最も若い大手企業役員」だという。姉と同じくなかなかの美人でもあり、いわば大韓航空のもう1人の「姫」だ。かつてテレビ出演した際には、「私はコネ入社だったの」とあっけらかんと語り、視聴者を唖然とさせたこともある。
空気の読めない「姫」のメールは、韓国国民の怒りに再び火を点けた。大手紙を含む韓国メディアは一斉にこのメールの内容を報道、「事態の責任を全社員に転嫁するかのような表現」(朝鮮日報)などと批判した。さらに上述したような過去の発言なども蒸し返され、いわば袋叩き状態となっている。
韓国の若者の不安が騒動を招いた
それにしても、「ナッツ・リターン」の一件から2週間強、機内でのいわば「小さなトラブル」が、当人は逮捕間近、妹もバッシング、はては大韓航空そのものを揺るがす大騒動までになるというのは、傍から見ていると理解に苦しむ部分もある。
韓国内でも、そうした感想を持つ人はいるようだ。朝鮮日報の韓賢祐文化部次長は、「ナッツリターンと韓国の20代」と題したコラムの中で、
「実際この事件の内容だけを見れば、ここまで国民の怒りを買うようなものでもないだろう。航空会社の副社長が乗務員のミスを指摘するのは当然のことであり、時には大声が出ることもあるだろう」
と違和感を表明する。それがここまでの事態になった背景としてこのコラムが指摘するのは、大企業に就職しない限り、結婚も、子供を持つことも難しい、韓国の厳しい「格差社会」の現状だ。
一方の「ナッツ姫」は、黙っていてもその彼らが渇望する大企業に入社でき、しかも将来はそれを引き継ぐ立場にある。そんな彼女による乗務員への暴言は、韓国の若者にとってはまさに自分事であり、「そのため大多数の国民はいつまでたっても怒りが収まらないのだ」。
実際に今回の問題をめぐっては、大韓航空のみならず、財閥経営者の一族のこれまでの行状が次々と批判の的となっている。騒動は当面沈静化しそうにない。