朝日新聞のいわゆる従軍慰安婦をめぐる報道を検証する第三者委員会(委員長:中込秀樹・元名古屋高裁長官)が2014年12月22日、検証結果をとりまとめた報告書を公表した。
8月5日、6日に掲載された検証記事では、済州島で女性が強制連行されたとする「吉田証言」が「虚偽」だったとして関連記事を取り消したが、謝罪がなかったとして批判を浴びた。これに加えて、謝罪がなかった点を指摘した池上彰氏のコラムの掲載を見送ったことで、さらに批判が高まることになった。今回の報告書では、いずれの判断も木村伊量(ただかず)前社長の意向が強く反映されていたことが明らかになった。社長自身が、事態を悪化させていたことが明らかになった形だ。
7ページの記事を4ページに縮小、続報も掲載見送りに
調査委員会は10月10日から12月12日にかけて木村氏以下、延べ50人の役員、従業員、関係者にヒヤリングを行った。
検証記事の掲載は、政府が河野談話発表の経緯を検証することになったことを受けて掲載された。7月上旬時点で、検証チームが作成した記事は7ページにわたるものだった。だが、この分量では「大げさになりすぎ一般読者に何事かとの印象を与えるとの懸念」が経営幹部から出たため、4ページに縮小された。ただ、この時点では「おわび」を載せる方針だった。
「GE(ゼネラルエディター、渡辺勉氏)の強い意向もあり、検証チームの方針としては、訂正しておわびをする方針で固まり、7月15日までは、1面掲載の論文及び過去記事において訂正しておわびする旨を明記した紙面案が作成された」
だが、7月16日に木村氏、危機管理担当の経営幹部、GEらが協議した場で、木村氏がおわびに反対する意見を出した。これをきっかけに、役員らによる「拡大常務会」には、おわびを入れない案が提出され、最終的に掲載された紙面では謝罪はなく、杉浦信之・編集担当役員(当時)の署名入り記事で「反省」を表明するにとどまった。
当初は、検証記事に対する反響に対して続報を出す方針だったが、検証記事掲載直後から「おわび」がないことをはじめとする強い反発が起こったため、「批判に逐一反論すると火に油を注ぐことになって、危機管理上望ましくないと判断」した。河野談話が吉田証言に依拠していないことを指摘する記事を8月28日に掲載した以外は、続報の掲載を見送った。