米・キューバ国交交渉で、大手新聞「看板コラム」で知恵絞る

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   米国とキューバの国交交渉を受けて、2014年12月19日、大手新聞各紙は期せずしてこのテーマを一面下の看板コラムで取り上げた。読売「編集手帳」、日経「春秋」、産経「産経抄」はヘミングウェーの「老人と海」、朝日「天声人語」は映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」、毎日「余録」は「南方熊楠」、東京「筆洗」は黒沢明の「用心棒」から書き出している。

ヘミングウェーから黒沢明まで多彩なネタ探し

   「老人と海」はキューバ沖の海で年老いた漁師が巨大な魚と格闘する物語。「編集手帳」は、「孤独な闘いは4日間つづいた」「年老いた漁師は疲れて眠る」という物語の流れを、「敵意と敵意の織りなす緊張がようやく疲れて眠りに就く時刻を迎えたらしい」という現状に重ねる。「産経抄」はそのヘミングウェーが人生の後半22年間をキューバで過ごしたことを踏まえ、米・キューバの両国を愛した今は亡きヘミングウェーも交渉の進展を望んでいるはずだとみる。「春秋」は「人間、ぶちのめされたって負けることはねえ」(小川高義訳)というこの老人の独白を、カストロ元首相が集会や行進のスローガンにしていたことを明かしつつ、「来るものが来たら、そのときのことだ」という老人の独白の続きを伝え、いまや転機を迎えていることを示す。

   「天声人語」はキューバの老音楽家たちの素朴な姿を追って世界的にヒットしたドキュメンタリー「ブエナビスタ」の映画と音楽が、米国人のキューバに対する好感度を向上させたという説を紹介、政府レベルの敵対と「人々の心」とのずれに思いを寄せる。「余録」は1891年、博物学者の南方熊楠がスペインの植民地キューバを訪れ、独立戦争の革命軍で戦ったという伝説や、そこで採取した地衣類が、「東洋人が白人領地で成し遂げた初の新種発見」だったという奇縁を導入部分に使った。「筆洗」は1961年に公開された黒沢明の「用心棒」のモデルはカストロかもしれないという珍説を、その後キューバを訪れた作家の堀田善衛さんが現地の通訳から聞いたという話から始めている。二組の悪党と戦う「用心棒」は、当時のキューバの人々にとって、親米独裁政権と米国企業に挑むカストロに重なったのだという。

   こうしたコラムは、元々のニュースにどんな「持ちネタ」を絡ませるかが腕の見せどころだが、59年のキューバ革命、62年のキューバ危機から半世紀余り。世界史を動かすかもしれない歴史的な大事件ということもあり、各紙とも名文記者たちがネタ探しとその料理法に知恵を絞った様子がうかがえる。

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