「正恩暗殺映画」、テロ予告でお蔵入り ソニーは「北朝鮮」に屈服したのか

全国の工務店を掲載し、最も多くの地域密着型工務店を紹介しています

   ソニー傘下の映画会社が、北朝鮮の金正恩第1書記の暗殺をテーマにしたコメディー映画を事実上「お蔵入り」させることになった。大規模なサイバー攻撃で内部の重要情報が流出した上、犯人を名乗る者から「2001年9月11日を想起せよ」などとテロ攻撃を示唆する声明が発表されたことが響いた。

   サイバー攻撃の犯人と北朝鮮当局とのつながりは現時点では明らかではないが、北朝鮮当局も映画会社を強く非難しており、結果としてソニーが北朝鮮側の脅しに屈したとの見方もできそうだ。

サイバー攻撃の犯人は「平和の守護者」名乗る集団

映画の予告編は300万回以上再生されている
映画の予告編は300万回以上再生されている

   問題となっている映画は、ソニー傘下の映画会社ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)が制作した「ザ・インタビュー」。SPEは2014年12月17日(米東部時間)、12月25日に予定されていた全米公開を見合わせると発表した。今後も上映される予定はないといい、事実上の「お蔵入り」だ。

   SPEは11月24日に大規模なサイバー攻撃を受け、社内のPCに「Hacked By #GOP(GOPが乗っ取った)」という文字が表示された。このGOPとは「平和の守護者(guardian of peace)」と称するハッカー集団だとみられている。サイバー攻撃では、未公開映画に加えて社員の給与、社内メールなど重要情報が流出し、SPEは大打撃を受けていた。

   これに加え、12月16日にはGOPを名乗る集団が犯行予告をソースコード投稿サイトに投稿。直後に、先行上映(プレミア)を12月18日に予定していたニューヨークの映画館が上映中止を決定。SPEは上映中止の判断は映画館に任せていたが、大規模映画館チェーンが相次いで上映中止を決めたことから、公開見合わせに追い込まれた。

   このように、公開見合わせの直接の引き金になったのが、この「犯行予告」。「警告」と題して投稿され、01年9月の同時多発テロに言及しながら、サイバーテロにとどまらず、物理的なテロ行為を行うことを予告している。

「『ザ・インタビュー』が先行上映を含めて上映されるまさにその時と場所に、テロに楽しみを求める者がいかに悲惨な運命をたどるべきか、我々は明確に示す。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントがいかに恐ろしい映画を作ったのか、近く全世界が知ることになる。世界は恐怖で満たされるだろう。2001年9月11日を想起せよ。上映場所から離れた方がいい。自宅が映画館から近ければ外出した方がいい。ここ数日で起こる事柄は、すべてソニー・ピクチャーズ・エンタテインメントの強欲が招いたものだ。全世界がソニーを非難するだろう」

北朝鮮はSPEが「当然の罰を受けなければならない」と主張していた

   GOPと北朝鮮とのつながりは明らかではなく、北朝鮮は11月24日のサイバー攻撃への直接的な関与を否定している。だが、関与を否定する北朝鮮の談話ではSPEを執拗に攻撃しており、北朝鮮が第三者に攻撃させたとも読める内容だ。

   談話は、12月7日に朝鮮中央通信が「謀略とねつ造にたけている南朝鮮のかいらい当局を糾弾」と題して配信。国防委員会政策局の談話という体裁で、その中には「ソニー・ピクチャーズ」という社名が8回も登場している。SPEについては

「米国のどこに位置しており、またどんな悪行をしでかして致命的なひどい目にあっているかということについて全部は知らず、あえてそれについて知る必要を大きく感じていない」

と、「知らぬ存ぜぬ」を装う一方で、「当然の罰を受けなければならない」と、何らかの報復を示唆している。

「先日から米行政府の対朝鮮敵視政策に便乗してわれわれの最高の尊厳を謗り、テロをあおり立てる不純な映画を制作して放映しようとした映画制作普及社」
「当然の罰を受けなければならないというのが我々の変わらない立場」

   加えて、サイバー攻撃を行った犯人についても妙に断定的だ。

「われわれのこの(連帯して米国や連合国を相手に戦おうという)アピールに応えて立ち上がったわれわれの支持者、同情者の義に徹する所業であるのが確かである」
「われわれには、米国の汚らわしい映画制作普及社である『ソニー・ピクチャーズ』に対する打撃を加えている『平和の守護者』だけでなく、世界の各地に数億、数千万の支持者、同情者がいる」

   北朝鮮がなんらかの事情を把握しているとも解釈でき、「中国をはじめとする第三国経由で攻撃した」という見方も出ている。米メディアによると、米当局はサイバー攻撃への北朝鮮の関与を断定したという。

姉妹サイト