米主要紙のニューヨークタイムズ、ワシントンポスト、ロサンゼルスタイムズが相次いで、安倍晋三首相の歴史認識に対して批判的な社説や記事を掲載した。
日本国内で従軍慰安婦問題を否定する動きが強まっており、安倍首相がその「後押し」をしているというのが大筋の主張だ。
「歴史をごまかそうとする勢力に迎合」に総領事が反論
NYタイムズ電子版は2014年12月3日、「日本の歴史のごまかし」と題した社説を掲載した。冒頭から、「日本の右派政治勢力が安倍政権の後押しを得て、旧日本軍が数千人の女性を強制的に慰安婦にさせたという第二次世界大戦の暗部を否定しようとの脅迫的なキャンペーンを繰り広げている」と批判的なトーンが強い。
さらに「慰安婦問題は日本の戦時中の敵がでっち上げた大ウソだとする政治的な動きが勢いを増しており、歴史を修正しようとする者たちが1993年の政府の謝罪(編注:河野談話)を撤回させようとしている」と主張。そして安倍政権が「戦時中の歴史をごまかそうと望んでいる勢力に迎合する危険な遊びに手を出している」とまで踏み込んでいる。また、1991年に慰安婦だと名乗る女性のインタビュー記事を朝日新聞に書いた元記者、植村隆氏が登場。極右勢力が同氏とその家族を脅迫して「我々を黙らせたがっている」とのコメントを引用している。
日本政府はこれまで、戦時中に女性を誘拐などによる「強制連行」で慰安婦にしたことを直接立証する資料はないと説明してきた。だがNYタイムズはこれを認めない。今回の社説では、安倍首相が「歴史のごまかし」を促していると取れる内容だけに、日本側は看過できなかったようだ。12月17日には、草賀純男ニューヨーク総領事によるNYタイムズへの反論文が同紙に掲載された。
「安倍首相が右派政治勢力による脅迫的なキャンペーンを後押し」について、「日本政府は報道の自由や、国民による開かれた建設的な議論を支持している。こうした価値観に対するいかなる脅しは断じて許さない」と主張。また首相が歴史のごまかしを望む勢力に迎合しているとの表現にも、「安倍首相はこれまで何度も、歴史と真摯に向き合うと述べ、慰安婦として苦痛を味わった女性たちに深い反省の意を繰り返し表明している」と説明。社説に書かれている内容の「誤解」を指摘した。