ヤフー(Yahoo! JAPAN)がインターネット検索のビッグデータを活用し、2014-15年冬のインフルエンザの流行地域を公表するサービスを始めた。インフルエンザの患者報告数と感染地域をリアルタイムで把握し、都道府県別のマップなどで紹介する。毎週月曜日に最新データに更新するという。
ヤフーによると、今冬のインフルエンザは2014年12月9日時点で、関東を中心とする東日本が西日本より患者が多い。全国的には2015年1月の第1週あたりに患者数がピークを迎えそうで、正月前後に最も警戒する必要があるという。
キーワードの検索数と、患者報告数や流行地域に密接な相関
インフルエンザの流行をめぐっては、厚生労働省が9月から翌年3月まで毎週金曜日に公表する「インフルエンザの発生状況」という公式データがある。これは定点当たりの報告数でインフルエンザの流行を知らせるものだが、ヤフーはビッグデータを活用することで、厚労省のデータを事前に予測することが可能になるという。
ヤフーはこれまでに「インフルエンザ」に関連するキーワードの検索数と、実際の患者報告数や流行地域に密接な相関があることを発見。2013年1月に「Yahoo!検索から見えた今年のインフルの猛威」というレポートを発表するなど、ビッグデータを活用したインフルエンザの分析に取り組んできた。その結果、「名前は明かせないが、あるインフルエンザ治療薬と患者報告数には高い相関があり、都道府県別の検索分布を分析することで、今どこでインフルエンザが流行しているのか、拡大途中なのか収束に向かっているのか可視化が可能になった」という。
ビッグデータ分析で、衆院選の議席数を予想
今冬のインフルエンザの流行について、厚労省は「昨年よりも3週間早い」と発表しているが、ヤフーのビッグデータの分析でも、その事実が裏付けられているという。12月9日の時点では都道府県別で岩手県の増加率が高く、最も流行が早い。西日本では徳島県や宮崎県などで増えており、ヤフーは「急激な蔓延に気をつける必要がある」と呼びかけている。
インターネット上に存在する個人の検索履歴や商品購入履歴などビッグデータを活用した新たなサービスは、私たちの生活に革命的な変化をもたらす可能性がある。ヤフーは衆議院の解散・総選挙でも有権者の検索キーワードを基にビッグデータを分析。衆院選の議席数を予想するなどしている。
地域情報サイト「Jタウンネット」上でも同様な試み
これまでもアマゾンや楽天などがネット販売の個人の購入履歴をビジネスに活用してきたが、今後は医療や自動車、金融や農業など幅広い分野にビッグデータが活用され、私たちの生活が便利になる可能性がある。しかし、膨大なビッグデータの中には個人情報も含まれており、プライバシーの保護など新たな課題も抱えている。
2013年夏にはJR東日本がIC乗車券Suica(スイカ)の利用履歴をデータとして第三者に販売したところ、利用者の同意がなかったとして、プライバシー保護が問題となった。
ヤフーはビッグデータについて「日本最大級のポータルサイトYahoo! JAPANに匿名化され、蓄積された検索・広告・ショッピング・地域情報・ソーシャル上のトレンド情報など、あらゆるカテゴリーの膨大なデータを分析・活用し、世の中の課題解決を行っていくことを目的に(サービスを)展開していきたい」としている。
なお地域別の感染症流行情報の配信は、IIJイノベーションインスティテュートなども試みている。地域情報サイト「Jタウンネット」上で配信しているもので、こちらも今後は、地図などを活用し、ユーザーに感染症への注意を促すことを目指すという。