連合は2014年12月2日、東京都内のホテルで中央委員会を開き、2015年の春闘で、2%以上のベースアップ(ベア)を要求することを柱とする闘争方針を決定した。
連合のベア要求は2年連続で、水準は2014年春闘の「1%以上」を上回る。労働側の強気の要求水準に、経営側がどう回答するのか。大企業の集中回答日となる3月中旬へ向け、労使の駆け引きが本格化する。
定期昇給部分を含めて4%以上を求める
連合のスローガンは「賃上げで景気の底支えを!『休み方』『働き方』改革で長時間労働を撲滅!」。要求の根幹となる賃金については、物価上昇や経済の好循環を実現する観点から、ベア2%以上(定期昇給部分を含めて4%以上)を求める。中小組合(組合員数300人未満)は、格差是正と底上げを図る目的で「最低到達水準」を設定し、定期昇給とベア分を含め1万500円以上を、非正規労働者は時給37円以上を、それぞれ引き上げるよう要求する。
古賀伸明会長は2日、東京都内のホテルで開かれた中央委員会であいさつし「月例賃金の引き上げを、今年度以上に広げる。賃金水準にこだわり、底上げ・格差是正をより一層重視した取り組みを進める」と宣言した。
連合は2014年の春闘で5年ぶりにベア要求し、「これまで長きにわたり一定水準にはりついていた賃金レベルを引き上げることができた」と総括している。政府が経済界に対して「賃上げ圧力」を加えたことも大きかった。ただ大企業を中心にベアが広がったとはいえ、物価上昇を加味した実質賃金は低下し続けており、景気は低迷している。
経営側もベアを容認する方針
2014年の春闘以上の目標を掲げたのは、物価上昇を上回る賃上げを実現しなければ「経済の好循環」は成り立たないとの強い危機感からだ。自動車総連や電機連合など産業別組合で構成する金属労協は、月給平均の2%に当たる月6000円以上のベアを求める方針を掲げる。
これに対し経団連の榊原定征会長は、ベアについて「一つの選択肢」と述べ、2年連続でベアを容認する方針を示した。労使とも、方向性は一致しているようにみえる。
ただ企業業績の改善具合は一様ではない。自動車業界は、好調な米国販売や円安に支えられて好調だ。例えばトヨタ自動車は2015年3月期の連結純利益が過去最高となる2兆円に達する見通しこれに対し、電機業界は日立製作所、東芝、三菱電機など重電に強い企業は好調な一方、家電中心のシャープはまだ再建途上。富士通やNECも回復基調にあるとはいえ、磐石とはいえない。
組合の要求「丸呑み」は考えにくい
急激に進む円安は、輸出型の大企業にとって業績の押し上げ要因となるが、輸入型企業、中小企業の多くは、デメリットとなる。業界間、企業間の「格差」が広がる中、回答もばらつきそうだ。
要求が高すぎることも、交渉の難しさを予感させる。金属労協が掲げる「6000円」は1998年以来の高水準だ。2014年の春闘では、トヨタは4000円の要求に対し、回答は2700円。日立など電機大手の回答は、要求の半分の2000円だった。2015年の春闘も大企業を中心に、一定程度のベアを回答するとみられるが、経営側が組合の要求を「丸呑み」することは考えにくく、どの水準で着地するのか、アベノミクスの「弱点」である実質賃金アップとも絡んで注目を集めそうだ。