連載・世襲政治に未来はあるのか(4)
日本人は世襲が好き リーダーに能力求めない文化がある 作家・評論家の八幡和郎さんに聞く

世襲議員は単なる「遺産」以外に「負の遺産」を相続すべき

―― では、世襲問題はどうすれば改善されるとお考えですか。有権者としては、どのようなことができるのでしょうか。

八幡:まず、2世であるということを、今よりはネガティブに評価することが必要です。ダメとは言わないまでも「必ずしも良いことではない」と思うことです。次に、世襲議員は単なる「遺産」以外に「負の遺産」を相続していることを有権者が認識すべきです。典型的なのが、田中真紀子元外相です。田中角栄元首相がロッキード事件で逮捕されて有罪判決を受けたことについて、真紀子氏が角栄氏についてどのような評価を口にするか有権者は注目すべきです。真紀子氏はロッキード事件について角栄氏を批判しないのであれば、「負の遺産」も相続していることになります。そうであれば、父親に関する批判も自分に向けられていると受け止めるべきです。それ以外にも、政策に関する勉強会を充実させるとか、「閣僚の世襲率が国会議員の世襲率を超えないようにする」といった、当選後の不公正を是正するようなルール作りも必要です。

―― 立候補段階ではいかがですか。

八幡:現役議員が任期途中で急に引退を表明した場合、候補者選考の時間が取れず、なし崩し世襲になることも多い。後任候補決めの手続きを事前に決めておくべきです。例えば「引退表明から1年以内に行われる選挙には世襲候補は立候補できない」と決めるなど、色々やり方はあります。
―― 世襲でない人にとっては「参入障壁」も高いです。
八幡:例えば「世襲議員に立ち向かう候補を応援する会」といったNPOを立ち上げて、世襲でない人を政党横断的に支援する運動を展開するのも一案です。他の仕事から政治家への転進を支援することも重要。具体的には「選挙に出ることで職業を失う」リスクを下げることが有効です。民間でも官庁でも、退職しなくても休職した上で出馬しやすくしたり、仮に落選しても元の職場に復帰できたりする環境づくりが必要です。

八幡和郎さん プロフィール
やわた・かずお 作家・評論家、徳島文理大学教授。東京大学法学部を卒業後、通商産業省(現経済産業省)に入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官房参事官などを歴任後、テレビなどでも活躍中。
『本当は恐ろしい江戸時代』『本当は謎がない古代史』(ソフトバンク新書)、『愛と欲望のフランス王列伝』(集英社新書)、『江戸三〇〇藩最後の藩主』(光文社新書)、『歴代総理の通信簿』(PHP研究所)、『世襲だらけの政治家マップ』(廣済堂新書)など多数の著作がある。

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