家に帰ると、鍵穴に接着剤――。こんないたずら、嫌がらせをされて、玄関前で途方にくれた経験がある人は意外と世の中にいるようなのだ。
別れ話のトラブルから元交際相手の自宅玄関ドアの鍵穴に瞬間接着剤を流し込んだとして、大阪府警都島署は2014年12月9日、建造物損壊の容疑で会社員の男を逮捕した。同様の嫌がらせはどうすれば防ぐことができるのだろうか。
近隣住民とのトラブルで嫌がらせされることも
同署によると、逮捕された京都市山科区の男(28)は7月21日5時25分ごろ、大阪市都島区の20代女性宅の玄関ドア2か所とガレージのシャッター、計3か所の鍵穴に瞬間接着剤を流し込んだ。
13年8月ごろ、元交際相手から別れを切り出されトラブルとなり、調べに対し「彼女を困らせてやろうと思った」などと供述し、容疑を認めているという。ドア付近に設置した監視カメラには、金色のロングヘアーをかぶった不審な男が映っており、捜査が進められていた。
また、女性宅には13年11月ごろから14年8月にかけて逮捕された件を含め計5回、同様の被害があり、そのたびに鍵を交換していた。これらの関連も調べている。
同署は、交際関係のもつれから玄関ドアに嫌がらせをすることは「あまり聞いたことがない」と言うが、さまざまなトラブルが原因で、鍵穴に接着剤を入れられる嫌がらせはあるようだ。
13年12月には、東京都杉並区で同じマンションの住民と生活音をめぐるトラブルがあった女が、各戸の玄関ドアに接着剤を注入して器物損害容疑で逮捕される事件が起きた。ネット上にも、同様のいたずらにあったという書き込みは複数ある。
自分で対処すると、かえって悪化
鍵の修理、交換を行う「鍵」(東京都品川区)の広報担当者も「鍵穴に接着剤が入れられたという相談はめずらしくありません」と話す。いたずらでマンションの1フロアすべての鍵穴に接着剤が注入されていたこともあったという。
また、接着剤以外にも木の破片などが詰められるケースもあり、「砂などが自然に入ることもない訳ではないが、鍵が入らない、回らない場合は人為的な原因以外は考えにくい」という。
接着剤が入れられた場合、通常の鍵の開錠と比べて対処は容易ではない。専門の工具を使っても時間がかかり、「自分で何とかしようとして、かえって悪化することもありうる」(同広報)として、シリンダーごと交換する羽目になった人もいるようだ。
今回の事件ではNHKが女性宅の防犯カメラ映像を放送した。映像を見ると、わずか数秒の犯行で、かなりの「早業」だ。通りがかりを装えば、周囲の人にも気づかれにくい。
はたして防ぐことはできるのか。「鍵穴やドアノブごと覆うダイアル式の二重鍵をつければ、鍵穴を隠すことはできます。ただ、手間や費用の問題があり、その気になれば二重鍵にも細工することはできない訳ではありません。警察に相談したり、防犯カメラを組み合わせたりして、抑止力を高めることも考えた方がいいでしょう」としている。