百田尚樹さんが書いた、やしきたかじんさんとその妻さくらさんの物語「殉愛」(幻冬舎)をめぐるトラブルを、ついに週刊誌が取り上げ始めた。
ただし、その取り上げ方は大きく異なる。サンデー毎日や週刊朝日はたかじんさんの長女サイド、週刊文春と週刊新潮は百田さんやさくらさんサイドの言い分が目立つ記事構成。各誌が当事者それぞれの主張を代弁する、いわば「代理戦争」の様相を呈してきている。
当初テレビや週刊誌はスルー
百田さんが「すべて真実」だというノンフィクション「殉愛」は、2014年11月7日の発売直後からさまざまな「疑惑」が持ち上がっていた。
ネットではさくらさんのイタリア人男性との重婚説や、たかじんさん直筆とされるメモの真偽が取りざたされた。長女や元マネージャー、スタッフらを見舞いにも行かず、金銭の無心ばかりする存在として描いた内容についても、元弟子で歌手の打越元久さんがツイッターで「全くのデタラメ話をさも真実のように書かれてる」と反論している。
代表曲「東京」を手がけた作詞家の及川眠子さんら関係者も非難の声を上げると、百田さんは「売名行為する作詞家というのも実に厄介や」と応戦。ネット上では大きな盛り上がりを見せていた。
しかし、こうしたバトルを当初テレビや週刊誌は一切取り上げなかった。水道橋博士が「売れっ子であるが故に作家タブーによって身のスキャンダルから守ってもらうほど『文士の恥』はないと思うが...」と揶揄するツイートをしても、週刊誌は沈黙を続けた。
11月21日、長女が記述によって名誉を傷つけられたとして、出版差し止めと損害賠償を求めて提訴に踏み切ると、ようやく新聞各紙が取り上げた程度だった。
百田さん露出メディアを選別?
しかし、週刊文春(12月11日号)で林真理子さんが、「この言論統制は何なんだ!」「大きな力が働いているのかと思う異様さだ」と週刊誌が取り上げないことを指摘すると流れが変わってきた。
サンデー毎日(12月14日号)は長女の代理人弁護士に取材。たかじんさんを偲ぶ会でさくらさんへヤジを飛ばしたことや病床のたかじんさんに「自業自得」とメールしたとする「殉愛」の記述を否定した。
週刊朝日(12月19日号)も「百田尚樹さん、事実は違う。なぜ、私に取材しなかったのか」と見出しをつけて、長女への取材をもとにした記事を掲載。サンデー毎日同様、「殉愛」に書かれた内容を否定した。
一方、週刊文春(12月18日号)は、「林真理子さんの疑問にお答えします」と題した百田さんによる文章が寄稿されている。さくらさんの重婚や遺産目当ての結婚疑惑を否定し、作中で離婚歴に触れなかったことを「私が描きたかったのは、凄絶とも言える闘病と愛の最後の二年間だったからです」とする主張を掲載した。
週刊新潮は「当事者双方インタビュー!」としているが、さくらさんサイドの言い分が目立つ。さくらさんと百田さんのコメントは度々登場するものの、長女やその関係者のコメントは3回出てくるのみだ。また、重婚やメモ偽造の疑惑については「いずれも事実はなかった」と断じている。
百田さんは文春に文章を寄せたり、新潮にコメントをしたりする一方で、週刊朝日には「現在係争中であり一切の回答を差し控えさせていただきます」としている。露出するメディアを選んでいると見ることもできる。今後も週刊誌上で両陣営の言い分がぶつかる「代理戦争」が展開されそうだ。