中国内でも化学プラント
一方、原油への輸出依存からの脱却を目指す中東産油国も、国策として原油を製品化して販売することに注力しており、原油産出の際の随伴ガスを活用した石油化学プラントへの投資を拡大させている。製品輸出先として有力視されているのはやはり製造業の集積地である中国だ。
第三に、中国でも内陸部の豊富な石炭を原料として、エチレンなどを抽出する化学プラントの建設が始まっていることだ。報告書によると、2018年までに約60基が計画されており、将来的に中国内需に占める国産の割合が上昇するとみられている。
国内の化学企業もこうした状況に危機感を強めており、住友化学が2015年5月に千葉工場のエチレンプラント(生産能力=年38万トン)を停止し、国内でのエチレン生産から撤退することを決定。旭化成は水島工場のプラント(同44万トン)を2016年までに停止し、隣接する三菱化学のプラントの共同運営を始める予定だ。それでも国内の生産能力はまだ640万トンあり、2012年の国内生産610万トンを上回っており、さらなる能力削減は避けられない状況なのだ。
産業競争力強化法に基づく調査報告は、今年6月の石油元売り業界に続き2例目。政府は業界の現状への見解を示すことで、金融機関や株主から再編圧力が高まる効果を狙っている。複数の企業によるプラントの統廃合は、権利関係などの問題が起きやすく、経産省は2015年3月末までに模範的な統合手続きを示す指針を作る方針という。
経産省内では「事業全体に占める石油化学の比率が高く、付加価値のある高機能化学素材へのシフトが遅れている企業はもはや生き残れない。石油精製、石油化学を含め、エネルギー関連の企業が大同団結するくらいの業界再編も選択肢だろう」(幹部)との声も聞こえる。