大槌町の初冬の風物詩として昨年、復活した「おおつち鮭まつり」のサケのつかみどりが12月7日、大槌川の河川敷でありました。
大槌町は新巻鮭発祥の地として知られています。江戸時代、大槌城主の大槌孫八郎が塩蔵したサケを江戸に送り、「南部鼻曲がり鮭」として珍重されたのが始まりとされています。以来、大槌の水産業を支えてきた秋サケ定置網漁ですが、今シーズン、震災の影響で不漁に陥る可能性があると指摘されています。
サケは放流されてから3年から5年かけて母なる川に戻ってきます。主流は4年で戻る4歳魚です。今シーズンの4歳魚は、震災時に放流されるはずだったサケたちです。しかし、当時、ふ化場は津波で壊滅的な打撃を受け、稚魚の放流がほとんどできませんでした。今のところ、水揚げ量は昨年並みに推移していますが、4歳魚が戻り始める12月初旬以降、大幅に減少する恐れがあります。
鮭まつりでは、そんな不安を吹き飛ばすように、歓声が河川敷にこだましました。大槌川の浅瀬に設けられた天然のいけすにサケが放流され、受付先着順の100人が10組に分かれて挑戦。大人も子どもも、軍手、胴長靴姿で奮闘し、1人1尾を持ち帰りました。岩手県紫波町の塚沢さおりさんは、家族5人で訪れ、4人がつかみどりに参加しました。塚沢さんは「サケはぬるぬるしていて暴れまわるため、なかなか捕まえることができませんでした。楽しかった」と感想を述べました。
まつりのステージでは、郷土芸能や、大槌町出身で盛岡市内の高校に通う臼澤みさきさんによる「里帰りミニライブ」がありました。2012年の中学生時に、第45回日本有線大賞新人賞、第54回日本レコード大賞新人賞を受賞した臼澤さんは、デビュー曲の「故郷(ふるさと)~Blue Sky Homeland~」を歌い、会場は大きな拍手に包まれました。
自然の脅威と自然の恵み。私たちは自然に生かされていることを改めて実感する一日になりました。
(大槌町総合政策課・但木汎)
連載【岩手・大槌町から】
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