国会議員を「姫」と呼んで「家老」が持ち上げる――。政治資金問題では、こんな関係がクローズアップされたが、それは「群馬」という地域の政治文化そのものだった。
JR高崎駅から北へバスで30分ほど、農村地帯の中でJAなどの施設や住宅が集まる一角に、小渕優子氏(40)の選挙事務所があった。こぢんまりとしたプレハブ造りの建物だ。すぐ隣には、小渕氏が出馬した衆院選・群馬5区では最も大きい、JAはぐくみ群馬支店の建物が見えた。
小渕優子氏が農家保護に熱心なのは、父親譲り?
「敷地は、JAに借りていますよ。小渕の一番の支援者ですからね」。元群馬県議の平田英勝選対幹事長は、こう説明した。
小渕氏の資金管理団体が購入したことの分かった特産のこんにゃくやねぎも、選挙区内のJAで取り扱っている。首相に上り詰めた父親の故・恵三氏は、かつて自民党のこんにゃく対策議員懇談会の代表を務めており、農家の保護には熱心だった。こんにゃくに今でも高い関税がかけられているのも、恵三氏ら群馬選出の首相4人を始めとした地元有力者の力添えがあるからだともされる。
今回、特産の物品などを買って県内外の関係者らに配ったのは、根拠はないものの、小渕家が代々やってきたことではないのかとの指摘がある。
いわば世襲の中で、恒例行事として何の疑問も持たれずに続けられてきた可能性があるわけだ。
政治資金を握っていたのは、「家老」とも呼ばれた秘書だった。「姫」こと小渕氏は、東京生まれの東京育ちで、父親の選挙の手伝いはしたことがあったものの、地元のことは任せっきりで本当に知らなかったのかもしれない。ネットなどの意見を見ると、こうしたことは世襲の弊害ではないかとみる向きが多い。
小渕家は、衆院議員だった故・光平氏から3代続く政治家ファミリーだ。北関東にあって農村地帯も広がる群馬県は、このような世襲政治家の割合が突出している。