大手旅行会社「JTB」の取締役名で、グループ2社の複数の創価学会担当社員に公明党への選挙協力を社内向けのメールで要請していたことが分かった。衆院選・東京12区に出馬した公明党の太田昭宏氏(69)は、監督官庁である国交省の大臣をしており、波紋が広がっている。
きっかけは、週刊ポストが2014年12月8日発売号でスクープしたことだった。
大口顧客になっている創価学会から求められる
記事では、「JTBがグループ社員に送った『創価学会様に選挙協力』メール」として、グループの中堅男性社員が明かしたとされるメール内容が報じられている。
それによると、メールは、「特定団体への協力依頼について」とのタイトルで発信された。JTB取締役旅行事業本部長の名前で11月27日付の文面になっており、国内研修会などの大口顧客になっている創価学会からの要請とあった。
そこでは、東京、神奈川、千葉に住む社員は「公明党の政治活動を支援します」とした比例代表向けの用紙で、太田昭宏氏の東京12区か前職の上田勇氏(56)が出馬した神奈川6区に住む社員は太田氏や上田氏の支援者名簿を作るための用紙で、それぞれ署名集めをしてもらうよう求めている。
メールでは、「社員個人としての任意協力」と強調したが、「営業政策上の観点から各事業会社においても可能な範囲での協力を求められております」などと念押ししている。
日本の企業では、社員に特定の政党や候補者への支援などを求めることはよくあることだともされる。ネット上でも、「選挙時期になるとこれ書かされるよ。社長からお願いされる」「うちの会社も、重役に関係者いるらしくて、選挙前には、営業時間より15分前に集められ、候補者が『お願い』の挨拶する」といった書き込みが見られた。しかし、証拠も残る社内メールで直接、政党などへの支援を求めるというのは異例だ。
JTBは、監督官庁への弱みを明確に否定
JTB取締役名でグループ社員に要請メールをしたことについて、ネット上では、「社員の思想信条の自由、民主主義というものが分っていない」「『任意』って言ったって、言葉に出さない強制だよ」と批判の声も相次いでいる。
元東京地検検事の落合洋司弁護士は、ツイッターで「不特定多数を相手にするサービス提供者は中立性を大事にしないと、不信を持たれ客を失うことになる。そういう簡単なことがわからんかな」と疑問を呈した。
JTBの広報室では、取材に対し、会社としての関与は否定したものの、あくまでも任意の協力要請としてメールが送られていたことを認めた。署名用紙も添付し、住所や電話番号などを書いてもらうことにしていたことも明かした。実際には、取締役ではなく、旅行事業本部の担当者がメールしていたという。
こうしたメールが以前からあったかについては、「会社が発信したものではありませんので、把握していません」と答えた。会社として特定の政党などを支援することはないという。要請メールは、法務的には問題はないといい、「法的に違反があれば対応しますが、選挙違反などではありません」として担当者らの処分は否定した。
国交省の外局になる観光庁が監督官庁になっているが、国交省がらみの要請に弱みがあったかについては、「そういうことは一切ございません」と強調した。
今回の衆院選では、自民党の圧勝が伝えられる中で、公明党が比例代表で埋没する恐れがあり、東京12区でも次世代の党副代表の田母神俊雄氏(66)が出馬した影響が出ていると報じられている。そこで、公明党の広報部に取材すると、「公明党がJTBに要請をした事実はありません」とだけコメントが返ってきた。