2014年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値が、物価変動の影響を除いた実質ベースで前期比0.5%減、年率換算で1.9%減となり、速報値(前期比0.4%減、年率1.6%減)から下方修正された。
「GDPショック」といわれた11月の速報値の発表以降に、改定値を予測していた民間シンクタンクの多くが上方修正するとみていただけに、またもやその予想は覆された。
主因は設備投資の落ち込み拡大
内閣府が2014年12月8日に発表した7~9月期のGDP改定値(季節調整済み)は、年率換算で1.9%減(実質ベース)で、速報値から下方修正。物価の影響を反映し生活実感に近い名目GDPも、前期比0.9%減(速報値0.8%減)、年率換算で3.5%減(3.0%減)と下方修正された。
実質GDPを需要項目別にみると、個人消費(前期比0.4%増)と輸出(1.3%増)は速報値と変わらなかったが、住宅投資は6.7%→6.8%減、設備投資が0.2%減→0.4%減、公共投資2.2%増→1.4%増、輸入は0.8%増→0.7%増と、いずれもマイナス幅が広がった。
安倍政権は消費増税後、4~6月期はマイナス成長になるものの、駆け込み需要の反動減が徐々に和らぎ、7~9月期はプラス成長に転じるとのシナリオを描いていた。しかし、消費の低迷が想定以上に長引いたことでGDPは2期連続でマイナス成長となり、個人消費の低迷に加えて、企業の設備投資も低調なことが再確認された形だ。
下方修正の主因は、設備投資の落ち込み幅が速報値より拡大したこと。GDP速報値では「鉱工業生産指数」と「生産動態統計」をベースに算出するが、企業の設備投資については、遅れてまとまる財務省の「法人企業統計」を加味する。
第一生命経済研究所経済調査部の主席エコノミスト、新家義貴氏は8日発表の定例経済指標レポートで、「上方修正が見込まれていた設備投資と在庫投資がそろって予想を大きく下回ったことが下振れの主因」とした。
財務省が1日に発表した法人企業統計によると、7~9月期の設備投資額は前年同期と比べて5.5%増と6期連続で増加した。前期は3.0%増だった。
設備投資のうち製造業は10.8%増と2期ぶり、非製造業も2.7%増と6期連続の増加。GDPの設備投資に反映されるソフトウエアを除いた額 は5.6%増と前期の1.9%増に比べて拡大していた。
なぜ、ブレる? 「内閣府は持っているデータ量が違う」
2014年12月8日午前8時50分のGDP改定値の発表に、記者から思わず、どよめきの声があがったという。1日に財務省が発表した法人企業統計をみて、多くのエコノミストが「上方修正」を予測していたためだ。
1日付のブルームバーグで、SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは、「設備投資が2次速報で上方修正される可能性が高い」としたうえで、「プラス成長に転じる可能性もあり得る」と予想。前出の第一生命経済研究所の主席エコノミスト、新家義貴氏の事前予測は「年率0.5%減」とみていた。
民間シンクタンク13社の予測では、予測値(平均)は実質ベースで年率0.5%減とし、上方修正される見通しとしていた。下方修正を予測していたのは、大和総研(年率1.7%減)にとどまるようだ。
ニッセイ基礎研究所経済研究部の斎藤太郎・経済調査室長は、速報値とほとんど変わらないGDP改定値に、「率直に、驚いた」という。
GDPはさまざまなデータから推計する2次統計。そのため、新たなデータが出るたびに改定値や修正が入るので、「結果的に、(民間予測と)大きくブレることはめずらしくない」(斎藤氏)。
とはいえ、民間シンクタンクの予測と、なぜこうもブレるのか聞くと、「(内閣府は)持っている(1次情報の)データ量が違います」と指摘する。膨大なデータ量をもとに算出・分析している内閣府に対して、「民間予測には限りがあります」というのだ。
さらに、内閣府がデータを意図的に操作することはないのか聞くと、「まったくないと思いますよ。真面目にやっているから、外部から見ると違和感のある数字になったりするんです」と言い、「たとえば、今回にしても選挙で与党に有利に働くようにするのであれば、下方修正なんてしないでしょう」と話す。