選挙で勝敗を決める大きな要素のひとつが無党派層の動向だ。情勢調査で「与党優勢」と伝えられる中でも「まだ投票態度を決めていない人が多く、情勢は流動的」という但し書きがつくのも、そのためだ。
ただ、世論調査の調査項目では「日頃支持している政党がない」という人にも、あえて投票先や支持政党を聞いている。これまでは野党が無党派層の受け皿になると考えられてきたが、今回の衆院選では、無党派の中にも自民党に投票すると答える人が増えている。景気対策を打ち出す自民党が無党派層を着実に取り込んでいると言え、与党の堅調ぶりを改めて裏付ける形になっている。
無党派層で「やはり支持する政党はない」人は38.4%
共同通信が2014年11月28、29日に行った「第2回衆院トレンド調査」では、「あなたには日ごろ、支持している政党がありますか」という問いに対して64.8%が「ない」と答えている。全体の3分の2近くが無党派層ということになるが、この無党派層に対しても「あえて支持するとすれば、どの政党ですか」と聞いている。その結果、支持が多かったのは自民党(34.0%)、民主党(10.3%)、維新の党(6.4%)、共産党(2.4%)、公明党(1.9%)、社民党(1.8%)の順。ここでも自民党が「一人勝ち」だ。なお、「やはり支持する政党はない」と答えた人も38.4%いた。
ここで注目すべきは、無党派層の中でも自民党を支持する人の割合が増えていることだ。
それは11月19、20日に行われた第1回調査の結果と比べれば明らかだ。第1回調査で無党派層の支持が多かった政党は自民党(29.2%)、民主党(13.1%)、維新の党(5.0%)、共産党(4.4%)、公明党(1.4%)、社民党(1.0%)の順。2回の調査で政党の順位は変わらないが、自民、公明、維新、社民を支持する人の割合が増え、民主、共産を支持する人の割合が減少していることがわかる。なお、第1回調査で「やはり支持する政党はない」と回答した人の割合は43.0%で、時間が経つにつれて投票先を決める人が増えていることが分かる。
12年衆院選よりも自民に投票する無党派層が増える?
他社の調査を見ると、自民党が政権を奪還した12年衆院選よりも、その傾向は強まっている。例えば朝日新聞が12月2、3日に行った電話調査では、無党派層に対して比例の投票先を聞いている。多かったのは自民党41%、民主党21%、維新の党15%、公明党7%の順。12年調査では自民27%、維新26%、民主15%、みんな10%、公明6%の順だった。維新が無党派層からの支持を失う一方で、自民、民主ともに支持を伸ばしていることがわかる。ただ、伸び率は民主党6ポイントに対して自民党は14ポイントと大幅に上回っている。12年選挙は民主党にとって大逆風だったことを考えると、今回の衆院選では民主党の伸び率が自民を上回るはずだが、実際は民主党が全く批判票の受け皿になっていないことがわかる。
毎日新聞が12月5~7日に行った世論調査でも、同様の結果が出ている。無党派の投票先は自民21%、民主13%、維新11%、共産8%。12年の調査では自民15%、民主9%なので、やはり自民の方が支持の伸びが高い。
民主党は12月5日から「考えよう。日本を。データが語るこの国のすがた」と題した動画を公開している。様々なデータや図表を盛り込んで日本の現状を解説しており、最後に
「与党支持層は野党支持層の約2倍です。でも、一番多いのは無党派層です。あなたが動けば、日本は変わります」
と訴えている。無党派層の取り込みが狙いだが、現時点では全く目的は達成できていない。