下っ端の警官が「やる気なし」というケースも
高山氏も中国での滞在中、かつて何度か似たような「拘束」(尋問)を受けた経験があり、同業者から事情を聞いたこともある。状況はケースバイケースだが、深刻さの加減は警官の表情を読み取ることで判断がつく場合もあるようだ。
「例えば相手がダラダラしていて明らかに緊張感がなかったり、『蒼井そらは日本のどこに住んでいるんだ』などといった取り調べと無関係の好奇心に基づく質問をして来たりする場合は、あからさまに抵抗しない限り長期の拘束や暴力に発展する可能性は比較的低いと考えていいのでは」
コミュニティーの中には、外部からの「侵入者」を監視して怪しげな行動だとみれば警察に通報し、「小遣い」をもらう民間協力者の監視網もあるという。だが、呼ばれてやってくる下っ端の警官が「やる気なし」というケースも少なからずあるそうだ。撮影した写真を消去しろと言われることもあるが、相手の機嫌ややる気次第では「適当に話題をそらしてダラダラ話していると、そのうち相手も仕事が面倒くさくなって尋問をやめてしまうこともあり得ます」。
もっとも、中国の警察は緩いばかりではもちろんない。逆に相当厳しい対応をとられると考えられるのは、当局が「重点的に隠したいことにあえて突っ込む」場合だと高山氏は指摘する。例えば、中国当局の軟禁状態にある著名な人権活動家にインタビューを試みる、あるいは天安門事件の記念日当日に知名度の高い犠牲者遺族に接触する、大規模な官民衝突や少数民族争乱の直後に現地に突撃する、などといった行為だ。
前出の小林氏は著書の中で、21回拘束されたうち報道されたのは1度だけで、中国での拘束は「外国メディアからすれば日常茶飯事」と明かしている。大江アナのケースも深刻さの度合いは弱かったのかもしれない。とは言え「こうすれば大丈夫」という確固たる答えがあるわけではなく、油断は禁物だ。