急激な円安の進展で、中小企業の倒産が続出している。
「円安・ドル高」が勢いづくなか、2014年12月5日の東京外国為替市場は1ドル121円41銭まで円が下落。1ドル120円を突破したのは、じつに約7年4か月ぶりのことだ。
円3か月で16円超下落
日本銀行による「量的・質的金融緩和」が続く一方、米国の景気回復に伴う利上げ観測から、円売り・ドル買いの動きは当面収まりそうにない。円は最近の1か月で6円強、3か月前と比べる16円強も下落した。
安倍政権による経済政策、アベノミクスは2012年12月からの2年で、じつに40円もの円安・ドル高を演出したことになる。
みずほ銀行産業調査部によると、対ドルで10円円安が進んだ場合の営業利益額の影響は、上場企業では1兆7436億円の増益要因となるが、中堅・中小企業を中心とする非上場企業にとっては8048億円の減益となる(2013年度決算をもとに推計)としている。
また業種別にみると、たとえば「機械・電気機器」は9144億円の増益、自動車などの「輸送用機械」は5084億円の増益が見込まれているのに対して、「卸売・小売業」は3972億円の減益、「食料品」は1835億円の減益、「金属製品・その他製造」も1881億円の減益になっている。
周知のように、円安は海外展開が進んでいる大手企業や輸出型企業には増益に働くが、原材料や製品などを輸入に頼る内需型や輸入型企業にはマイナスに働く。
みずほ銀行産業調査部は、中堅・中小企業には内需型や輸入型企業が上場企業よりも多く存在し、そのことが円安の影響がマイナスに働く背景になっていると考えている。さらに取引の関係から、立場の弱い中小企業は仕入れ価格などの上昇分を取引先への出荷価格に上乗せしにくいこともある。
一方で、12月5日の東京株式市場は、1ドル120円台の急速な円安を背景に、日経平均株価の終値が前日比33円24銭高の1万7920円45銭となり、小幅ながら5日連続で2014年の最高値を更新する、まさに絶好調。
広がりつつある大手の上場企業と中堅・中小企業との業績格差に、円安が大きく影響していることは確かなようだ。