政府が新たな宇宙基本計画の素案をまとめた。パブリックコメントを経て2014年内に決定し、15年度からの実施を目指すが、ここでも「安倍カラー」を前面に出し、安全保障を重視しているのが最大の特徴で、賛否は分かれている。
現行の宇宙基本計画は5年計画として13年1月に策定されたばかりだが、国家安全保障会議の発足や国家安全保障戦略の策定などを踏まえ、安倍晋三首相が9月、「政権の新たな安全保障政策を反映させるとともに、宇宙産業基盤を強化する」と、10年間の新計画作りを指示していた。
ミサイル発射の熱を感知する「早期警戒衛星」の研究も
11月上旬に発表された素案は安保と産業育成を強く打ち出している。
まず安保。「安全保障分野で宇宙を積極的に活用していくことが必要」とし、宇宙空間への進出を強める中国やミサイル開発を進める北朝鮮への対応を念頭に「日米宇宙協力の新しい時代」の到来を明記した。
具体的には、軍事施設の動きを監視する事実上の偵察衛星である情報収集衛星の強化や、日本版GPS(全地球測位システム)である高精度の測位情報を地上へ送る準天頂衛星を、現在の4基から7基体制にすると記述したほか、ミサイル発射の熱を感知する「早期警戒衛星」の研究、不審船の監視なども挙げた。
また、地球周辺に使用済み衛星やロケットの破片など10センチ以上のものが1万数千個浮遊しているとされるが、この「宇宙ごみ」について、監視情報の共有と施設整備を進めるとして、防衛省と宇宙航空研究開発機構(JAXA)の連携強化も盛り込んだ。運用中の衛星に宇宙ごみが衝突して損傷させる懸念はもちろんだが、何より、中国が2007年に実施した衛星破壊実験を念頭に置いたもの。
「衛星通信が使えなくなるなどで活動が制約されると影響が大きい」(防衛省筋)だけに、米国も神経をとがらせているとされる。見直し作業中の日米防衛協力の指針(ガイドライン)でも宇宙戦略での協力が重要な柱として盛り込まれる見通しといい、その流れで今回の素案に盛り込まれた。