ソニーは2014年11月25日、エレクトロニクス(電機)事業に関する投資家向け説明会で、事業分野ごとの中期戦略を発表した。主要5分野のうち、4分野は2017年度の売上高、営業利益率目標を示し、このうちテレビやデジタルカメラなど2分野は売上高が減少すると予測した。
これまで甘い見通しを示し、下方修正を繰り返して投資家を失望させてきたソニー。拡大路線から、利益重視の堅実路線へ転換したといえそうだ。
「売れる商品」に機種を絞り込んで収益を確保
2014年度の売上高が1兆2000億円、営業利益率は0.8%の見通しのホームエンタテインメント&サウンド分野。この分野に属するテレビは10年連続で赤字が続いたが、今年度はようやく黒字転換しそうだ。画質が良い「4Kテレビ」や、CDより音質が良い「ハイレゾ」関連機器の販売は好調に推移している。
ただ2017年度の売上高目標は1兆~1兆1000億円と控えめで、営業利益率は2~4%に設定した。4Kテレビは今後も需要が拡大するとみているが、同時に単価下落も進むと分析しているためだ。テレビ事業の子会社、ソニービジュアルプロダクツの今村昌志社長は「安定的な収益基盤を確立する」と力を込めた。発売機種を2014年度比で3割削減するなど、「売れる商品」に機種を絞り込んで収益を確保したい考えだ。
デジタルカメラやビデオカメラなどのイメージング・プロダクツ&ソリューション分野は、スマートフォンの台頭によって、コンパクトデジタルカメラ市場が大幅に縮小すると予想。2017年度の売上高は6500億~7000億円と、2014年度見通しの7100億円より減少すると見込む。
一方、拡大を見込むのが、プレイステーション4が好調なゲーム&ネットワークサービス分野。2017年度の売上高は1兆4000億~1兆6000億円と、現状の1兆2900億円を上回る。プレステのハードだけでなく、インターネットを通じたゲームやビデオ、音楽の有料サービスにも力を入れ、営業利益率は現状の2.7%から5~6%に引き上げる目標を掲げた。
車載や医療領域にも注力
スマホ向けのイメージセンサーなどをてがけるデバイス分野は、売上高8900億円に対し、営業利益率7.5%と、最も「稼ぐ力」がある領域。これを2017年度は売上高1兆3000億~1兆5000億円、営業利益率10~12%に高める。スマホやタブレットだけでなく、車載や医療領域にも注力する方針だ。
今年度、2040億円の赤字を計上する見通しのモバイル・コミュニケーション分野。主力のスマホ事業をどう立て直すのか、「ソニー復活」のカギを握る。事業子会社の社長に就任したばかりの十時裕樹氏は「売上高が2~3割落ちても利益が出る体制にする」と宣言。世界に13か所ある営業拠点の削減や、製品を半減するなどして、2016年度以降に安定的な収益を上げる体制にするという。11月の説明では数値目標を示さなかったが、今年度中に、計画の詳細を明らかにする予定だ。
ソニーの手堅い収益計画を、株式市場はひとまず前向きに評価しているようで、「今年度の無配を決断したことと併せ、再建への本気度は評価できる」との声がある。ただ、「エレクトロニクス部門を縮小するほど、ソニーの価値は高まる」(海外メディア関係者)との声もくすぶり、予断は許さない。今回の戦略の実行は、ソニー反転の出発点にすぎないと言えそうだ。