米ニューヨーク・マンハッタンで大規模なデモが発生した。ニューヨーク市警の白人警官が今夏、黒人男性を逮捕する際に背後から首を絞めて死亡させたが、大陪審で不起訴の判断が下された。デモはそのことへの抗議だ。
人種差別に対する強い反発に加えて、警官が暴力的な行為で一般人を死に至らしめたうえに不起訴となった点に、市民は怒りを爆発させた。
「『息ができない』。なんてことだ」
「オレは何もやってない」
こう訴える黒人男性を複数の警官が取り囲む。ひとりが手錠を持って近づくと男性は「触るな」と払いのけようとするが、すぐに白人警官が男性の首を後ろから絞め上げ、数人が一斉に飛びかかった。男性がコンクリートの地面にうつぶせに倒れた後も、白人警官はその顔面を地面に押し付ける。「息ができない」 と何度も繰り返す男性。撮影者は「彼はけんかをとめただけだ。こんなことがあっていいのか」と思わずつぶやいた。
2013年7月、マンハッタンの南にあるスタテン島で起きたこの騒動の様子が映像に記録されていた。ニューヨーク市警では、警官による首絞めを禁じており、明らかにルール違反だ。亡くなった黒人男性、エリック・ガーナーさんはぜんそくを患っており、けい動脈や胸を圧迫されたことが死につながったとみられる。
ところが、大陪審は不起訴の判断を下した。理不尽な結果に怒った市民は、ニューヨーク市内各地で12月3日夜から抗議デモを繰り広げた。ガーナーさんが訴え続けた「息ができない」という言葉を連呼しながら、街を練り歩く人たちもいる。参加者は白人も少なくない。
多くの著名人も、不起訴の決定にツイッターで反応を示した。映画監督で人種差別問題の作品を数多く発表しているスパイク・リーさんは「黒人の命は大切だ。FBI(米連邦捜査局)に正義を求める」とツイート。俳優のクリス・ロックさんは「一部始終は撮影されているぞ」と、動画の掲載先のリンクを張っている。ミュージシャンのジョン・レジェンドさんは「『息ができない』。なんてことだ」と嘆き、グラミー賞受賞歌手・ギタリストのジョン・メイヤーさんも「今日、私の心が傷ついた。これ以外の言葉がない」と悲しんだ。
人気ミュージシャンのアリシア・キーズさんは12月3日、不起訴に抗議する曲をリリースした。楽曲のビデオには、不当な人種差別に反対するイメージが多く使われ、曲の最後にガーナーさんの肖像写真が数秒間映し出される。