全世界に大型店を展開するスウェーデン家具「IKEA(イケア)」が韓国からの抗議に屈し、日本海「SEA OF JAPAN」と表記された商品の販売を来年の2015年から全世界で中止する、そんな報道が相次いでいる。
一方、韓国の抗議で販売を中止したというのは全くの嘘だとイケアジャパンは頭を抱えている。イケアはどの国の政治的な圧力にも方針を変えることはないし、「SEA OF JAPAN」は国連のデータにもある世界統一の名称であるのは間違いなく、これからも「SEA OF JAPAN」デザインの商品が開発されれば、これまで通り販売していくのだという。
イケアコリアは「日本海」表記に正式に謝罪
イケアの韓国1号店オープンが14年12月18日に控える中、イケアに対する非難の声が上がることになったのは14年11月だ。イケアのカタログを見た韓国人から、プリミエールという装飾用の壁掛けのデザインが世界地図になっている、そこに「SEA OF JAPAN」という文字がある、と指摘されたのが始まりだった。この商品を販売したいなら韓国が主張する「東海 (East Sea)」を併記するように、などという要求があった。
イケア側がその商品は韓国で販売する予定はない、と応対したところ、「それでは韓国以外では売り続けるのか」と大反発が起こってしまい、商品不買を呼びかける動きも起きた。あわてた現地法人のイケアコリアは報道資料を通じ、14年11月17日、「SEA OF JAPAN」表記の重大な事案については承知している。スウェーデン本社に「東海」との併記をリクエストしているところだ、と説明し謝罪することになった。
「今回の事案に心配をおかけしたことを謝罪する」
日本国内では韓国が「東海」を主張し始めているのは知っているが、これは単なる言いがかりであり、イケアのような世界企業ならば当然、韓国側の主張を突っぱねるものと思っていた人たちが、イケアが正式に謝罪したとの情報にショックを受けた。ただし、この謝罪は現地法人のイケアコリアが韓国内に向けて行ったものだ。
そして14年12月4日、こんな記事が出ることになった。
「『日本海』表記の商品、全世界で販売中止へ イケア、韓国での反発受け」(産経新聞)
「『日本海』地図、世界で販売中止=韓国での反発受け―イケア」(時事通信)
「日本海」壁掛けも在庫がなくなるまで全世界で販売する
これは韓国メディアが報じた内容をもとに書かれたようで、聯合ニュースは、
「イケアは4日に報道資料を出し、『毎年、全製品群の約20%を新製品に入れ替えている』と説明した上で、来年中に、問題となった世界地図を世界の製品群から除外する計画だと発表した」
と書いている。こうした報道に日本のネットでは、
「イケアは反日企業なのか? 家具の8割をイケアで買ったのに、なんという侮辱」
「グッバイIKEA」
「日本側も反発しないと韓国の要求が全部通ってしまうよ」
などといった書き込みが出て大騒ぎになった。
こうした報道やネットの反応に頭を抱えているのがイケアジャパンだ。確かに14年12月4日に韓国でイケアコリアが韓国内のメディアに向けてメッセージを出したが、それを受けてのこうした記事には間違いがあるというのだ。イケアは毎年9500品目のうちの20%にあたる商品の入れ替えを行っていて、その入れ替えの中に韓国で問題になっている壁掛けが含まれていた、というそれだけなのだそうだ。
「韓国の非難によって販売を中止したというのは間違いです。そもそも各国の政治的な圧力を受けて商品の販売やデザインを変えることなどありませんし、問題となった壁掛けについても、在庫がなくなるまで世界で販売を続けて行きます」とイケアジャパン広報は話す。
ちなみに問題となった壁掛けは長さが2メートル近くあるため、住宅事情を考えて日本と韓国では販売していないそうだ。また、世界地図をデザインに用いているのはこの壁掛けのみ。これからこうした世界地図をモチーフにしたデザインの商品が作られるかはわからないが、「SEA OF JAPAN」はそもそも国連のデータにあるものだから何の問題もないし、商品が出来上がれば販売するのは当然のことだという。そして、今回の報道が事実であるかのように伝わっていることに頭を抱えていて、
「どうにかしてこの誤解を解かなければなりません。いろんな手を使って情報を発信し、イケア本来の姿を分かっていただけるよう頑張るしかないでしょう」