日本有数の高原レタスの産地として知られる長野県川上村。平均年収が2500万円にものぼるとされ、「成功農家」のモデルともてはやされるが、一方で外国人技能実習生らに過酷な労働を課している、「ブラック農家」との評判もある。
外国人実習生の受け皿となっていた「川上村農林業振興事業協同組合」は、2014年9月に東京入国管理局から受け入れ中止の処分が下り、11月には解散が決まった。インターネットではその「黒すぎる実態」が話題になっている。
村の人口の19.5%が農作業を手伝う外国人実習生
長野県川上村は、四方を山々が連なり、千曲川の源流に位置する。その豊かな土地と水を生かした、レタスをはじめとした高原野菜の栽培が村の基幹産業だ。「数字で見た川上村 2012」によると、人口は4163人で、農家の戸数は566戸。レタスの年間出荷量は6万2604トン、販売金額は81億8045万円にのぼる(数字はいずれも12年3月末時点)。
高冷地でのレタスの生産は夏季に集中しているため、シーズン中は明け方から深夜まで、長時間の農作業が続く、キツい仕事だ。
加えて、農家の担い手は60歳以上の高齢者が多い。川上村の農家は40~59歳の若い農業従事者が比較的多く、全国的にみれば恵まれた環境にあるのだが、それでも夏季の繁忙期には以前から学生アルバイトなどを募集して労働力需要を補っていた。
それを近年は、国の外国人技能実習制度を利用した中国人などの外国人実習生が農作業を手伝う。村が受け入れている外国人農業実習生の数は810人。じつに村の人口の19.5%を占める人数に及んでいて、その多くが中国人という。
そうした中で、外国人実習生を受け入れていた「川上村農林業振興事業協同組合」が2014年9月に、東京入国管理局から5年間の受け入れ停止処分を受け、また11月には解散を決めた。
同組合は村内の農家が起こした事業で、村も立ち上げには関わっていた。ただ、実習生の受け皿となる組合は周辺の南牧村などにもあり、現在は10社(組合)ほど。各農家が希望する組合を利用して実習生を受け入れているので、「必ずしも、(川上村の)組合を使っているわけではありません」(川上村)という。
一方、同組合の解散で受け入れ先を失う外国人実習生は、「他の組合が受け入れていくことで調整していくことになります」という。「利用していた農家は他の組合に頼むことになりますが、直ちに困ることもないと思います」と話している。
信濃毎日新聞(12月2日付)によると、東京入管は処分の理由を明らかにしていないが、組合役員の証言として、「実習生の在留資格で来日したのに農作業に携わらない者がいたなどの問題があったため、と入管から説明を受けた」と報じている。